文化財を守るということ
燃えてはじめて惜しまれるもの ── 利休とお絹が語る文化財保護
お二人、今日1/26は1949年に法隆寺金堂が炎上して、国宝の壁画が焼損した日にゃ。翌年に文化財保護法が制定された直接の契機になった事件で、毎年この日は「文化財防火デー」として全国で訓練が行われてる。今日のお題は「文化財を守るということ」── 「儚さの美学」を生きた利休さま、流行りもの好きで「今を楽しむ」お絹さま、両極端の二人で語ってほしいにゃ。
にゃん殿、難しき問いを賜りましたな。わたくしの茶の湯では、「一期一会」── この一服は二度とない、ゆえに尽くすという心を旨にしておりまする。されば、「失われるからこそ尊い」「焼けたからこそ意味が変わる」という見方もできまする。法隆寺金堂壁画が焼けた事件は、悲しき出来事であると同時に、わが国の人々に「文化財は永遠ではない」という覚悟を促した瞬間にもござりました。
利休さま、いきなり深いお話ね……。あたしのお江戸の感覚はちょっと違うわよ。あたしたち長屋の暮らしは、火事と隣り合わせなの。江戸の町は何度も大火に見舞われて、有名な火事だけでも明暦の大火、明和の大火、文化の大火……お寺もお屋敷も、何度も燃えて建て直されてきたわ。江戸っ子は「燃えたら建て直せばいい」って気質なのよ。残すことより、また作る元気のほうが大事って思っちゃう。
いきなり真逆の入り方にゃ!利休さまの「失われるからこそ尊い」と、お絹さまの「燃えたら建て直せばいい」── どっちも日本人の文化感覚の両極だね。じゃあ ── 法隆寺金堂壁画みたいに「建て直せないもの」もある。千四百年前の絵を再現することはできない。これについて、お絹さま、どう思う?
にゃんちゃん、それね、あたしも考えたわ。建物は建て直せても、千四百年前の人が描いた絵そのものは、もう絶対に同じには描けないのよね。「再現」と「本物」は違うって、あたしの歌舞伎の世界でも痛感するわ。江戸の名優の演技は、後の世でも芸として残るけど、「江戸の空気の中で見た団十郎」は、その時代に生きた人しか味わえないの。本物の「経験」は、本物が遺ってるからこそ可能なのよね……。
お絹殿の御見解、まこと核心を突かれましたな。わたくしの茶の湯でも、利休がたてた茶の味は、わたくしと共に消えました。されど、わたくしが愛した「茶器」は、四百年を超えてなお遺り、後の世の人々が手に取れる。「人と共に消えるもの」と「物として遺るもの」の境界を、文化財保護は引き直す仕事にござります。金堂壁画が焼けた事件は、その境界がいかに脆いかを世に示した瞬間にござりました。
二人とも、めっちゃ深いにゃ!「本物の経験は本物が遺ってるからこそ可能」「人と共に消えるものと、物として遺るものの境界」── どっちも文化財保護の核心だね。じゃあちょっと聞きたいんだけど ── 利休さま、お絹さま、それぞれの時代に「残すべきもの」って、何だった?
わたくしの戦国の世では、茶器が金銀よりも価値を持つ事態が起きておりました。秀吉公や信長公が、領地より茶器を恩賞に求めた家臣もおったほど。されど、わたくしは「茶器そのものより、茶を喫する場の精神を残せ」と願いまする。形あるものは焼ける、されど形なき精神は弟子が継ぐ── これがわたくしの遺し方の信条にて候。
お江戸の場合はね、正直に言うと「残す」より「写す」だったの。浮世絵も、団十郎の役者絵も、「複製を大量に作ることで、本物が一つ失われても全部は消えない」っていう知恵よ。葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」も、何百枚も摺られてるからこそ、今も世界中で見られるわけ。江戸の庶民文化は「複製の文化」で文化財保護の代わりをしてた**のよね。
「精神を弟子が継ぐ」と「複製で量で残す」── どっちも実は文化財保護の二大戦略にゃ。じゃあ最後に、お二人 ── 「現代の私たちは文化財をどう守るべきか」って、どんなアドバイスがある?
わたくしの提言は、「完全に守ろうとせず、半分は失う覚悟を持て」にござります。全てを永遠に残そうとすると、却って文化財は博物館の中で死ぬ。多少のリスクを引き受けてでも、人々が触れ、見、感じる場に置くことで、文化財は生き続ける。死んだ完璧より、生きた不完全── これがわたくしの茶の湯の精神にござります。
利休さまの「死んだ完璧より生きた不完全」、めっちゃ刺さるわ……!あたしから加えるなら、「子供に触らせる、見せる、楽しませる」わ。お江戸の歌舞伎は、子供を桟敷に連れて行って、おもしろがらせるから、次の世代も歌舞伎を愛したの。子供が「おもしろい」と感じない文化財は、次の世代で確実に死ぬわよ。法隆寺も、子供連れの家族が楽しく訪れる場であってほしい**わ。
お二人、最高の知恵にゃ〜!利休さまの「死んだ完璧より生きた不完全」、お絹さまの「子供がおもしろがる文化財であれ」── どっちも文化財保護の未来を照らす提言だね。法隆寺金堂炎上の悲しみから、令和の私たちが受け取るべきメッセージまで、深く語れた最高のサミットだったよ。お二人、ありがとう!