鎖骨は人体で最も折れやすい骨のひとつ
鎖骨は胸骨と肩甲骨をつなぐ細長い骨で、転倒時に手をついた衝撃が直接伝わるため、骨折が非常に多い部位だ。特に子どもやスポーツ選手に多く見られる。
鎖骨は他の多くの骨と異なり、軟骨を経由せず直接骨として形成される「膜性骨化」で発生する。胎児期に最も早く骨化が始まる骨のひとつでもある。
骨の中はスポンジ状の構造で軽さと強さを両立する
骨を切断して断面を見ると、外側は硬い緻密骨で覆われ、内部は海綿骨と呼ばれるスポンジ状の構造になっている。この設計により、最小限の重量で最大限の強度を実現している。
建築のトラス構造に似たこの仕組みは、力のかかる方向に沿って骨梁が配列されるため、効率的に荷重を分散できる。エンジニアが骨の構造を参考に軽量建材を開発した例もある。
舌骨は他のどの骨とも関節でつながっていない
のどの奥にある舌骨は、人体で唯一、他の骨と関節で接続していない「浮いた骨」である。筋肉と靭帯だけで支えられており、舌の動きや嚥下、発声に重要な役割を果たしている。
この特殊な構造のおかげで舌骨は自由に動くことができ、人間が複雑な言語音を発音できる理由のひとつとされている。
関節の種類によって動きの自由度が異なる
人体には約230個の関節があり、その種類によって動ける方向が決まっている。肩関節は球状のため多方向に回せるが、膝関節は蝶番のように一方向にしか曲がらない。
指の関節も蝶番型だが、親指の付け根にある鞍関節は2方向に動けるため、物をつかむという人間特有の精密動作を可能にしている。関節の形が体の機能を決定づけているのだ。
骨密度のピークは20代後半から30代前半だ
骨密度は成長とともに増加し、約20代後半から30代前半にピークを迎える。その後は少しずつ減少していき、特に女性は閉経後にエストロゲンの低下により急速に骨密度が下がりやすい。
ピーク時の骨密度が高いほど、その後の骨粗鬆症リスクが低くなるとされている。若い時期の運動とカルシウム摂取が将来の骨の健康を左右する「骨の貯金」になるのだ。
肋骨は呼吸のたびに広がったり縮んだりする
肋骨は心臓や肺を守る鎧のような存在だが、実は呼吸のたびに動いている。息を吸うと肋間筋の収縮により肋骨が持ち上がって胸郭が広がり、肺に空気が入るスペースを作る。
12対24本の肋骨のうち、下の2対は前方で胸骨につながっておらず「浮遊肋骨」と呼ばれる。この構造が胸郭の柔軟性を確保し、深い呼吸を可能にしている。
骨にはコラーゲンが含まれしなやかさを生んでいる
骨というと硬いイメージだが、重量の約30%はコラーゲンというタンパク質で構成されている。このコラーゲンが骨にしなやかさを与え、衝撃を受けたときに割れにくくしている。
たとえるなら、鉄筋コンクリートの鉄筋がコラーゲン、コンクリートがカルシウムなどのミネラルに相当する。どちらかが欠けると骨は脆くなってしまう。
骨折すると修復部分は一時的に元より強くなる
骨折が治る過程では、まず「仮骨」と呼ばれる応急的な骨組織が折れた部分を覆い、その後リモデリングによって正常な骨構造に戻っていく。
この仮骨形成の段階では、修復部分が周囲の骨より太く丈夫になることがある。ただしこれは一時的なもので、リモデリングが完了すると通常の強度に落ち着く。完全な回復には数か月から1年ほどかかるとされている。
成長板が閉じると身長の伸びが止まる
子どもの長い骨の両端近くには「骨端線(成長板)」と呼ばれる軟骨の層がある。この部分で新しい骨が作られることで骨が伸び、身長が増す仕組みだ。
思春期の終わり頃にホルモンの影響で成長板が硬い骨に置き換わって閉鎖し、それ以降は骨の長さは変わらなくなる。成長板が閉じる時期には個人差があり、女性の方が男性より早い傾向がある。
骨盤の形は男女で明確に異なっている
女性の骨盤は男性に比べて横幅が広く、産道を確保するために恥骨下角が広い構造をしている。一方、男性の骨盤は縦に長く幅が狭い形状が一般的だ。
この差は思春期にホルモンの影響で顕著になる。考古学では骨盤の形状から遺骨の性別を高い精度で判定でき、法医学でも身元確認の重要な手がかりとして利用されている。
歯は骨に似ているが骨とは異なる組織だ
歯はカルシウムが豊富で硬いため骨と混同されやすいが、実は骨とは構造が異なる。歯の表面を覆うエナメル質は人体で最も硬い組織で、骨よりも硬い。
決定的な違いは再生能力にある。骨は折れても修復されるが、エナメル質は一度欠けると自然には戻らない。歯の内部の象牙質やセメント質は骨に近い性質を持つが、エナメル質だけは生きた細胞を含まない特殊な組織である。
ビタミンKは骨へのカルシウム定着を助ける
骨を丈夫にするにはカルシウムだけでは不十分で、ビタミンKが重要な役割を担っている。ビタミンKはオステオカルシンというタンパク質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させる働きがある。
納豆や緑黄色野菜に多く含まれるビタミンKが不足すると、摂取したカルシウムが骨に取り込まれにくくなる。日本では骨粗鬆症の治療にビタミンK2製剤が使われることもある。
膝蓋骨は生まれたときにはまだ軟骨の状態だ
いわゆる「膝のお皿」である膝蓋骨は、生まれたばかりの赤ちゃんにはレントゲンに写らない。これは膝蓋骨がまだ軟骨の状態だからで、約3〜5歳になって徐々に骨化が進むとされている。
膝蓋骨は人体最大の「種子骨」と呼ばれるタイプの骨で、腱の中に埋まるように存在する。膝を伸ばすときにてこの支点として機能し、大腿四頭筋の力を約30%増幅する役割がある。
脊椎動物の首の骨は7個が基本形だ
キリンの長い首も、ネズミの短い首も、頸椎の数はどちらも7個。哺乳類のほとんどは首の骨が7個という共通構造を持っている。
違いは1つ1つの骨の大きさだけだ。キリンの頸椎1個は約25センチメートルもあるのに対し、人間では約1.5センチメートルほどである。この「7個の法則」の例外はナマケモノなどごく少数の種に限られる。
脳はマルチタスクが実は苦手である
同時に複数の作業をこなしているように見えても、脳は実際にはタスクを高速で切り替えているだけだ。この切り替えのたびに集中力がリセットされ、効率が落ちるとされている。
研究によると、マルチタスクを続けると作業時間が約40%増加するという報告もある。重要な作業はひとつずつ片付ける方が、結果的に速く正確に仕上がるらしい。
脳の約60%は脂質でできている
人体で最も脂質の割合が高い臓器は脳である。脳の乾燥重量の約60%が脂質で占められており、特にオメガ3脂肪酸のDHAが神経細胞の膜を構成する重要な成分になっている。
この脂質が神経信号の伝達速度や細胞膜の柔軟性を左右するため、良質な脂質の摂取が脳の機能維持に関わるとされている。
あくびは脳を冷却するためという説がある
あくびの理由には諸説あるが、有力な仮説のひとつが「脳の温度を下げるため」というものだ。大きく口を開けて空気を取り込むことで、鼻腔周辺の血管が冷やされ、脳の温度調節に役立つと考えられている。
気温が高い環境であくびの頻度が上がるという実験結果も報告されており、単なる退屈のサインではない可能性がある。
脳は1日に約6万回の思考を行うとされる
約6万回――これは脳が1日に生み出す思考の数として広く引用されている推定値だ。1秒間に1つ弱のペースで絶え間なく何かを考えていることになる。
興味深いのは、その大部分が前日と同じ内容の繰り返しだという点である。脳は省エネのために過去のパターンを再利用する傾向があり、意識的に新しいことを考えようとしない限り、思考はルーティン化しやすい。
神経可塑性で脳は一生変化し続ける
かつて「大人の脳は変化しない」と考えられていたが、現在では神経可塑性という性質により、脳は年齢を問わず構造を変え続けることがわかっている。
新しい技能を練習すると、関連する神経回路が強化され、使わない回路は弱まっていく。ロンドンのタクシー運転手の海馬が一般人より大きいという有名な研究は、この可塑性を示す代表的な例である。
デフォルトモードネットワークはぼんやり時に活発になる
何もしていないとき、脳は休んでいるわけではない。ぼんやりしている間に活発化する「デフォルトモードネットワーク」と呼ばれる脳領域のネットワークが存在する。
この回路は自己内省や未来の計画、過去の振り返りなどに関わっているとされている。創造的なひらめきがシャワー中や散歩中に起きやすいのも、この回路が活動しやすい状態になるためだと考えられている。
ストレスホルモンが多すぎると海馬が縮小する
短期的なストレスは集中力を高める効果があるが、慢性的にストレスホルモンのコルチゾールが高い状態が続くと、記憶を司る海馬の神経細胞がダメージを受け、体積が縮小することが報告されている。
逆に、適度な運動や十分な睡眠でコルチゾールを抑えると、海馬の神経新生が促進されるという研究もある。
小脳には脳全体の半数以上の神経細胞がある
脳全体の約10%ほどの体積しかない小脳だが、そこには脳全体の半数以上、約500億個もの神経細胞が詰まっている。
小脳は運動の微調整やバランス制御を担っており、膨大な数の神経細胞がリアルタイムで筋肉の動きを計算している。近年では運動以外に、言語処理や感情の制御にも小脳が関与するという研究結果が増えている。
脳が使うエネルギー源はほぼブドウ糖だけ
脳はエネルギー源として主にブドウ糖(グルコース)を利用する。通常、脂肪酸は血液脳関門を通過できないため、脳は糖質に大きく依存している。
ただし、長時間の絶食時にはケトン体という代替燃料を使うことも可能だ。この仕組みのおかげで、食事がとれない緊急時でも脳の機能が完全に停止することは避けられるようになっている。
笑うと脳内で複数の領域が同時に活性化する
笑いは単純な反応に見えて、脳にとっては高度な処理である。ユーモアを理解するために前頭葉が働き、感情処理に大脳辺縁系が関与し、笑い声を出すために運動野が活性化する。
さらに笑うとエンドルフィンが放出されてストレスが和らぎ、免疫細胞の活動が一時的に高まるという報告もある。
脳のシナプスの数は約100兆個にのぼる
約860億個の神経細胞同士をつなぐシナプス(接合部)は、脳全体で約100兆個あるとされている。この天文学的な数の接続が、思考・記憶・感情のすべてを支えている。
シナプスは固定されたものではなく、学習や経験によって新たに形成されたり消失したりする。よく使う回路ほど接続が強化される仕組みは「ヘブの法則」として知られている。
脳脊髄液は脳を衝撃から守るクッションだ
脳と脊髄は「脳脊髄液」と呼ばれる透明な液体に浮かんでいる。この液体がクッションの役割を果たし、頭をぶつけたときなどの衝撃を吸収して脳を保護している。
脳脊髄液は1日に約500ミリリットル生産され、常に循環しながら老廃物を運び出す役割も担っている。総量は約150ミリリットルで、数時間ごとに入れ替わっている。
運動すると脳由来神経栄養因子が増える
有酸素運動を行うと、脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質の分泌が増加する。BDNFは神経細胞の成長や生存を促し、学習や記憶の機能向上に寄与するとされている。
いわば「脳の肥料」のような物質であり、定期的な運動が認知機能の維持や認知症予防につながる根拠のひとつになっている。
利き手と反対の脳半球が主に運動を制御する
右利きの人の手の動きは主に左脳が、左利きの人は主に右脳が制御している。脳と体の運動指令は交差して伝わるためだ。
この交差は延髄の「錐体交叉」という部分で起こる。ただし運動制御は完全に片側だけが担うわけではなく、両半球が協調して働いている。左利きの人は右利きの人に比べて左右の脳の連携がより強い傾向があるという研究もある。
人体の細胞は約200種類に分化している
もともと1つの受精卵から始まった人体は、成長の過程で約200種類もの異なる細胞に分化する。筋肉細胞、神経細胞、血球細胞など、それぞれが特殊な形状と機能を持つ。
驚くべきことに、これらすべての細胞は同じDNAを持っている。違いを生むのはどの遺伝子が「オン」になりどの遺伝子が「オフ」になるかという発現パターンの差であり、この制御が細胞の運命を決定する。
血小板は細胞の破片だが止血に不可欠だ
血小板は正確には「細胞」ではなく、骨髄の巨核球という大きな細胞からちぎれた細胞質の断片だ。核を持たないため、寿命は約8〜10日と短い。
しかしこの小さな断片が止血の主役を担っている。血管が傷つくと血小板が素早く集まって「血小板栓」を形成し、さらにフィブリンという繊維のネットで補強して出血を止める。1マイクロリットルの血液に約15万〜40万個含まれている。
マクロファージは体内の掃除屋として異物を食べる
マクロファージは「大きな食べる者」を意味する名前の通り、体内で異物や老廃物、死んだ細胞などを貪食する免疫細胞だ。1個のマクロファージが最大約100個の細菌を処理できるとされている。
食べた異物の情報をT細胞に提示して適応免疫を活性化する「抗原提示」の役割も持ち、自然免疫と獲得免疫の橋渡し役としても機能している。
iPS細胞はどの細胞にもなれる人工万能細胞だ
2006年に山中伸弥教授らが発見したiPS細胞は、皮膚などの普通の細胞に4つの遺伝子を導入することで、ほぼあらゆる細胞に分化できる能力を取り戻した人工の万能細胞である。
この技術により、患者自身の細胞から臓器や組織を再生する治療法の開発が進んでいる。拒絶反応のリスクが低く、倫理的問題も少ないことから、再生医療の切り札として世界中で研究が続けられている。
エピジェネティクスはDNA配列を変えずに遺伝子を制御する
DNA配列そのものは変わらないのに、遺伝子の「読まれ方」が変わる仕組みを「エピジェネティクス」という。DNAのメチル化やヒストンの修飾によって、特定の遺伝子のスイッチがオンオフされる。
食事、運動、ストレスなどの環境要因がこのスイッチに影響することがわかっており、一卵性双生児が年齢とともに異なる体質になるのも、エピジェネティクスの変化が一因とされている。
ミトコンドリアは独自のDNAを持つ細胞内小器官
ミトコンドリアは細胞のエネルギー工場だが、核のDNAとは別に独自のDNA(約16,500塩基対)を持っている。このミトコンドリアDNAは母親からのみ遺伝するという特徴がある。
これは約20億年前に、細菌が別の細胞に取り込まれて共生を始めたことの名残だと考えられている。母系遺伝の性質を利用して、人類の祖先をたどる研究にもミトコンドリアDNAが活用されている。
NK細胞はがん細胞を日常的にパトロールして排除する
ナチュラルキラー(NK)細胞は、事前の学習なしに異常な細胞を攻撃できる免疫細胞だ。健康な人でも毎日数千個のがん化した細胞が生まれるとされているが、NK細胞がパトロールしてこれを排除している。
NK細胞の活性は笑いや適度な運動で高まり、強いストレスや睡眠不足で低下することが研究で示されている。体の見えない防衛ラインとして24時間働き続けているのだ。
細胞の大きさは種類によって1000倍以上違う
人体の細胞は、直径約7マイクロメートルの赤血球から、長さが1メートル以上にもなる坐骨神経の神経細胞まで、サイズの幅が極めて大きい。
最も大きい細胞は卵子(約0.1ミリメートル)で、肉眼でもギリギリ見える大きさだ。一方、精子は頭部が約5マイクロメートルと非常に小さい。同じ人体の中で、細胞のサイズがこれほど異なるのは、それぞれの機能に最適化された結果である。
オートファジーは細胞が自らを分解してリサイクルする
2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典教授の研究テーマ「オートファジー」とは、細胞が自分の中の不要なタンパク質や傷んだ小器官を分解してリサイクルする仕組みだ。
飢餓状態では特に活発になり、不要物を分解してエネルギーや材料として再利用する。このクリーニング機能が低下すると、神経変性疾患やがんのリスクが高まるとされている。
体内の常在菌は約38兆個で細胞数とほぼ同じ
かつて「人体の細菌は細胞の10倍」と言われていたが、2016年の再推計で約38兆個と修正され、人体の細胞数(約37兆個)とほぼ同数であることがわかった。
これらの常在菌は主に大腸に集中しており、消化を助け、有害菌の侵入を防ぎ、ビタミンを合成するなど、宿主と共生関係を築いている。常在菌叢の構成は食事や抗生物質の使用で大きく変動する。
受精卵は最初の分裂で2つの全能性細胞になる
受精卵が最初に分裂してできる2つの細胞は、それぞれが完全な個体に成長できる「全能性」を持っている。一卵性双生児はこの初期段階で細胞が2つのグループに分かれることで生まれる。
しかし分裂が進むにつれて全能性は急速に失われ、やがて各細胞は特定の組織にしかなれなくなる。たった1個の細胞から約37兆個の多様な細胞へと分化する過程は、生命の最も精巧なプログラムのひとつだ。
ヒトゲノムの約98%はタンパク質をコードしない
ヒトのDNAには約30億の塩基対があるが、タンパク質の設計図として使われている部分は全体の約2%にすぎない。残りの約98%はかつて「ジャンクDNA」と呼ばれていた。
しかし近年の研究で、この非コード領域の多くが遺伝子の発現を調節するスイッチや、RNAとして機能する重要な役割を担っていることが判明してきた。「ジャンク」は実はジャンクではなかったのだ。
筋肉細胞には複数の核が含まれている
ほとんどの細胞は核を1つだけ持っているが、骨格筋の繊維は例外だ。発生の過程で複数の筋芽細胞が融合して1本の筋繊維になるため、1つの細胞に数十から数百の核が含まれている。
この多核構造のおかげで、長い筋繊維の隅々までタンパク質合成の指令を素早く届けることができる。筋トレで筋肉が太くなるとき、核の数も増加するとされている。
細胞間のコミュニケーションは化学信号で行われる
37兆個もの細胞が協調して体を動かすには、緻密なコミュニケーションが必要だ。細胞はホルモン、神経伝達物質、サイトカインなどの化学物質を使って互いに情報をやり取りしている。
隣の細胞に直接信号を送る「傍分泌」、血流に乗せて遠くの細胞に届ける「内分泌」、自分自身に作用する「自己分泌」など、通信手段も多様だ。近年はエクソソームと呼ばれる小さな袋が細胞間の「手紙」として働くことも注目されている。
ビタミンB12は植物性食品にほとんど含まれない
ビタミンB12は赤血球の生成や神経機能の維持に不可欠な栄養素だが、自然界では動物性食品にしかほぼ含まれていない。肉、魚、卵、乳製品が主な供給源だ。
このため完全菜食(ヴィーガン)の食事ではB12が不足しやすく、サプリメントでの補給が推奨されている。B12の欠乏は貧血や手足のしびれ、記憶力の低下などの神経症状を引き起こすことがある。
人体の約60%は水分で構成されている
成人の体の約60%は水分だ。この割合は年齢や性別によって異なり、新生児は約75%、高齢者は約50%程度とされている。
水は栄養素の運搬、体温調節、化学反応の場の提供など、生命活動のほぼすべてに関わっている。体重の約2%分の水分が失われるだけで認知機能や運動能力が低下し始めるとされている。
GI値が低い食品は血糖値をゆるやかに上げる
GI値(グリセミック・インデックス)とは、食品が血糖値を上げるスピードを数値化した指標だ。白パンやお菓子などGI値が高い食品は血糖値を急上昇させ、その後急降下する。
一方、玄米や全粒粉パン、豆類などGI値の低い食品は血糖値がゆるやかに変動する。血糖値の急激な変動は空腹感やだるさを招きやすく、食品選びの参考指標として活用されている。
マグネシウムは体内の300以上の酵素反応に関与する
マグネシウムは地味な存在だが、体内で300種類以上の酵素反応に関わる重要なミネラルだ。エネルギー産生、タンパク質合成、神経伝達、筋肉の収縮弛緩など、幅広い機能を支えている。
不足すると筋肉のけいれん、疲労感、不眠などの症状が現れやすい。ナッツ類、ほうれん草、豆腐、バナナなどに豊富に含まれるが、現代の食生活では摂取不足になりやすいミネラルのひとつとされている。
塩分の摂りすぎは血圧上昇の主要因のひとつ
ナトリウム(塩分の主成分)を摂りすぎると、体が水分を保持して血液量が増え、血圧が上がりやすくなる。WHOが推奨する1日の塩分摂取量は5グラム未満だが、日本人の平均摂取量は約10グラムと大幅に超えている。
一方でナトリウムは神経伝達や筋肉の収縮に必須のミネラルでもあり、極端な制限も危険だ。カリウムを多く含む野菜や果物を摂ることで、ナトリウムの排出が促進されるとされている。
鉄は体内でヘモグロビンの酸素運搬を担う
血液が赤い理由は、赤血球に含まれるヘモグロビンが鉄を含んでいるためだ。この鉄が酸素と結合して全身に運ぶ役割を果たしている。
体内の鉄の約70%はヘモグロビンに存在し、残りは肝臓や脾臓にフェリチンとして貯蔵されている。女性は月経により鉄を失いやすく、鉄欠乏性貧血は世界で最も多い栄養欠乏症のひとつである。
ビタミンAは視覚と免疫の両方に不可欠だ
ビタミンAは網膜のロドプシン合成に必要で、不足すると暗い場所での視力が低下する「夜盲症」を引き起こす。同時に、皮膚や粘膜の健康維持や免疫機能にも深く関わっている。
にんじんやほうれん草に含まれるβカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取のリスクが低い。一方、レバーなどに含まれるレチノールは摂りすぎると蓄積して有害になることがある。
プロバイオティクスは生きた有益菌を腸に届ける
ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品に含まれる「プロバイオティクス」とは、摂取すると健康に有益な作用をもたらす生きた微生物のことだ。
腸内で善玉菌のバランスを保ち、悪玉菌の増殖を抑え、免疫機能を調整する働きがあるとされている。一方、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖は「プレバイオティクス」と呼ばれ、両方を組み合わせる「シンバイオティクス」が注目されている。
コレステロールの約80%は体内で合成される
悪者扱いされがちなコレステロールだが、細胞膜やホルモンの材料として体に不可欠な物質である。しかもその約80%は肝臓で合成されており、食事由来は約20%にすぎない。
そのため食事のコレステロール摂取を制限しても、血中コレステロール値が劇的に下がるとは限らない。体は食事からの摂取が減ると合成を増やし、摂取が増えると合成を減らすフィードバック機構を備えている。
ビタミンEは細胞膜を酸化ストレスから守る
ビタミンEは脂溶性の抗酸化物質で、細胞膜に存在して活性酸素による酸化ダメージから細胞を保護する働きがある。いわば細胞のボディーガードのような存在だ。
アーモンドやひまわりの種、植物油などに多く含まれる。ビタミンCと協力して働く性質があり、酸化されたビタミンEをビタミンCが再生するという連携プレーで抗酸化力を維持している。
基礎代謝は何もしなくても消費されるエネルギー
じっとしていても心臓は動き、体温は維持され、細胞は活動している。この生命維持に必要な最低限のエネルギーが「基礎代謝」で、1日の総消費エネルギーの約60〜70%を占めるとされている。
基礎代謝の約25%は肝臓が、約20%は脳が、約20%は筋肉が消費している。筋肉量が多い人ほど基礎代謝が高くなるため、運動していないときでもエネルギーを多く消費する体質になる。
葉酸は細胞分裂と胎児の発育に欠かせない栄養素
葉酸はビタミンB群の一種で、DNAの合成や細胞分裂に不可欠な栄養素だ。特に妊娠初期に十分な葉酸を摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが大幅に低下するとされている。
名前の由来はラテン語の「folium(葉)」で、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜に豊富に含まれる。水溶性で熱に弱いため、生で食べるか短時間の加熱が推奨される。
トランス脂肪酸は心疾患リスクを高める脂質だ
マーガリンやショートニング、揚げ物などに含まれることがあるトランス脂肪酸は、悪玉(LDL)コレステロールを増やし善玉(HDL)コレステロールを減らすという二重の悪影響を持つ。
WHOはトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギーの1%未満にするよう勧告しており、多くの国で食品への使用規制が進んでいる。日本では表示義務はないが、食品メーカーが自主的に低減を進めている。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がある
食物繊維は大きく水溶性と不溶性に分けられる。水溶性食物繊維は海藻や果物に多く含まれ、水に溶けてゲル状になり、糖の吸収をゆるやかにしたりコレステロールの排出を促したりする。
不溶性食物繊維は穀類や野菜に多く、水分を吸って膨らみ、便のかさを増やして腸の蠕動運動を促進する。両方をバランスよく摂ることが腸内環境の改善に効果的だとされている。
胃の粘膜は約3〜4日で完全に入れ替わる
強力な胃酸を分泌しながら自分自身を溶かさないために、胃は粘膜を高速で再生し続けている。胃の内壁を覆う粘膜細胞は約3〜4日ですべて新しいものに置き換わるとされている。
この驚異的な再生速度があるからこそ、pH1〜2という強酸性の環境でも胃が傷つかない。ストレスや薬剤でこの再生バランスが崩れると胃潰瘍のリスクが高まる。
肺は左右で大きさが異なっている
左右の肺は同じ大きさではない。右肺は3つの葉に分かれているが、左肺は心臓のスペースを確保するために2つの葉しかなく、やや小さい。
そのため右肺の方が空気を多く取り込める。左肺にはちょうどハートが収まる「心臓切痕」と呼ばれるくぼみがあり、体の設計が臓器同士のスペースを巧みに分け合っていることがわかる。
腸には約1億個の神経細胞がある「第二の脳」
腸の壁には約1億個もの神経細胞が張り巡らされており、「腸管神経系」と呼ばれる独立した神経ネットワークを形成している。この規模は脊髄に匹敵する。
脳からの指令がなくても腸は独自に蠕動運動を制御でき、消化・吸収を自律的に管理している。この仕組みから腸は「第二の脳」と呼ばれ、腸と脳の双方向通信(脳腸相関)が注目されている。
腎臓は血圧の調整にも深く関わっている
腎臓は老廃物を濾過するだけでなく、血圧の調整にも重要な役割を持つ。体内のナトリウムと水分のバランスを制御することで血液量を調節し、さらにレニンというホルモンを分泌して血管の収縮を制御する。
腎臓の機能が低下すると高血圧になりやすく、逆に高血圧が続くと腎臓がダメージを受けるという悪循環が生じることがある。
甲状腺は代謝のスピードを調整する小さな臓器
のどの前面にある蝶のような形をした甲状腺は、重さ約15〜20グラムの小さな臓器だが、全身の代謝速度を左右する甲状腺ホルモンを分泌している。
このホルモンが多すぎると代謝が上がりすぎて動悸や体重減少が起き、少なすぎると代謝が低下して疲労感や体重増加が生じる。体温調節やエネルギー消費のペースメーカーのような存在だ。
大動脈は体内で最も太い血管で直径約3センチ
心臓から全身に血液を送り出す大動脈は、直径約2.5〜3センチメートルもある体内最大の血管だ。ここを通る血液の速度は毎秒約40センチメートルにもなる。
大動脈は弾力性に富んだ壁を持ち、心臓の拍動による圧力を吸収してなめらかな血流を維持している。この弾力が加齢とともに失われると動脈硬化が進み、血圧が上昇しやすくなる。
胆嚢は肝臓が作った胆汁を濃縮して貯蔵する
ナス型の小さな袋である胆嚢は、肝臓で作られた胆汁を約5〜10倍に濃縮して貯蔵している。食事をとると胆嚢が収縮し、濃縮された胆汁を十二指腸に放出する。
胆汁に含まれる胆汁酸は脂肪を細かく乳化し、消化酵素のリパーゼが脂肪を分解しやすくする。胆嚢を摘出しても肝臓から直接胆汁が流れるため、食事は可能である。
横隔膜は呼吸を司る最も重要な筋肉だ
横隔膜は胸腔と腹腔を隔てるドーム状の筋肉で、呼吸運動の約70〜80%を担っている。収縮するとドームが平らになり、胸腔が広がって肺に空気が引き込まれる。
しゃっくりは横隔膜の不随意な痙攣によって起きる現象だ。横隔膜は自律的に動くが意識的にもコントロールでき、歌手や管楽器奏者が「腹式呼吸」を訓練するのはこの筋肉の制御力を高めるためである。
リンパ節は体内に約600個ある免疫の関所
全身に約600個あるリンパ節は、リンパ液に含まれる異物やウイルスをフィルタリングする免疫の「検問所」として機能している。
風邪を引いたときに首や顎のリンパ節が腫れるのは、免疫細胞がリンパ節内で活発にウイルスと戦っている証拠だ。リンパ節は特に首、脇の下、鼠径部に集中しており、これらは外部からの病原体が侵入しやすいルート上に位置している。
肝臓はアルコールを分解する唯一の臓器だ
体内に入ったアルコールを分解できるのは事実上、肝臓だけである。肝臓はまずアルコールをアセトアルデヒドに変え、さらに酢酸に分解し、最終的に水と二酸化炭素にする。
この処理能力は1時間あたり純アルコール約7グラム(ビール中瓶の約半分)程度とされている。処理を超える量を飲むとアセトアルデヒドが蓄積し、二日酔いの原因になる。
赤血球の寿命は約120日で脾臓で回収される
赤血球は骨髄で生まれ、約120日間全身を巡って酸素を運び続けた後、脾臓や肝臓で回収される。1日あたり約2000億個の赤血球が新たに作られ、同じ数が寿命を迎えるという。
回収された赤血球のヘモグロビンは分解され、鉄は再利用されて新しい赤血球の材料になる。体は鉄という貴重な資源を無駄にしないリサイクルシステムを備えているのだ。
唾液は1日に約1〜1.5リットル分泌される
口の中を常に潤している唾液は、3対の大唾液腺と多数の小唾液腺から1日に約1〜1.5リットルも分泌されている。
唾液は食べ物を湿らせて飲み込みやすくするだけでなく、消化酵素のアミラーゼでデンプンの分解を開始し、リゾチームなどの抗菌物質で口腔内の細菌増殖を抑制する。傷の治りが口内で早いのは、唾液に含まれる成長因子の働きによるとされている。
心臓は一生で約30億回拍動する
1分間に約60〜100回、1日に約10万回拍動する心臓は、80年の生涯でおよそ30億回も休むことなく動き続ける計算になる。
この間に送り出す血液の総量は約2億リットルにのぼり、大型タンカーを満たせるほどの量になる。心臓がこれほどの耐久性を持つのは、心筋細胞が疲労に極めて強い特殊な筋肉でできているためだ。
虫垂は免疫と腸内細菌の避難所として機能する
かつて「退化した無用の器官」とされていた虫垂だが、近年の研究でその役割が見直されている。虫垂にはリンパ組織が豊富に含まれ、免疫系の訓練場として機能しているとされている。
さらに、下痢などで腸内細菌が大量に流されたときに、虫垂が有益な腸内細菌の「避難所」となり、そこから再び腸内細菌叢が回復するという仮説も提唱されている。
人間の鼻は約1兆種類の匂いを区別できる可能性がある
従来は「約1万種類」とされてきた人間の嗅覚だが、2014年の研究で最大約1兆種類の匂いを区別できる可能性が示された。
嗅覚受容体は約400種類あり、それらの組み合わせパターンによって膨大な数の匂いを識別している。犬ほどの感度はないものの、人間の嗅覚は長らく過小評価されてきたのだ。
目は1秒間に約3回サッケードという高速運動をする
私たちの目は静止しているように見えて、実は「サッケード」と呼ばれる高速な眼球運動を1秒間に約3回繰り返している。
サッケード中、脳は視覚情報の処理を一時的に抑制するため、移動中のブレた映像は意識に上らない。この仕組みのおかげで、世界が常に安定して見えている。鏡で自分の目を左右に動かしても動きが見えないのは、この抑制が働いているためだ。
辛さは味覚ではなく痛覚で感じている
唐辛子を食べたときの「辛い」という感覚は、実は味覚ではない。カプサイシンという成分が痛覚受容体を刺激して生まれる痛みの一種である。
このため、辛さは舌だけでなく肌や目など、痛覚のある部位ならどこでも感じることができる。繰り返し食べることで受容体の感度が下がり、辛さに慣れていく現象も起きる。
固有受容覚は目を閉じても体の位置がわかる感覚
目を閉じた状態でも自分の腕や足がどこにあるかわかるのは、「固有受容覚」という感覚のおかげだ。筋肉や関節にあるセンサーが体の位置や動きを常に脳に報告している。
この感覚がなければ、歩くたびに足元を見なければならず、暗い場所での動作はほぼ不可能になる。スポーツ選手の巧みな身体操作も、この感覚の精度に支えられている。
人間の目の解像度は約5億7600万画素相当
人間の網膜には約1億2000万個の桿体細胞と約600万個の錐体細胞があり、視野全体を合わせると約5億7600万画素相当の解像度に匹敵するとされている。
ただし高解像度なのは視野の中心部だけで、周辺部はぼやけている。脳が視線を素早く動かしながら情報をつなぎ合わせることで、全体が鮮明に見えるように補正しているのだ。
耳の三半規管は3つの輪で回転方向を感知する
内耳にある三半規管は、互いにほぼ直角に配置された3つの半円形の管で構成されている。それぞれが異なる方向の回転を検出し、三次元的な頭の動きを感知している。
管の中にはリンパ液が入っており、頭が動くと液体の流れが有毛細胞を刺激して脳に信号を送る。乗り物酔いは、この三半規管からの情報と視覚情報のずれによって引き起こされる。
色覚の個人差は想像以上に大きい
同じ赤色を見ていても、人によって感じ方はかなり異なる。錐体細胞の感度には遺伝的な個人差があり、まったく同じ色世界を共有している人はほぼいないとされている。
男性の約8%、女性の約0.5%は一般的な色覚と異なるタイプを持つ。一方、ごくまれに4種類の錐体を持つ「四色型色覚」の人もおり、通常より多くの色を識別できる可能性がある。
触覚は胎児が最初に発達させる感覚だ
五感の中で最も早く発達するのは触覚である。妊娠約8週目にはすでに胎児の口周りに触覚反応が現れ、徐々に全身へと広がっていく。
視覚や聴覚が本格的に機能するのは出生後であるのに対し、触覚は子宮の中で十分に発達する。生まれたばかりの赤ちゃんが肌と肌の接触で安心するのは、この早期発達の名残だと考えられている。
耳介の複雑な形は音の方向特定に役立っている
耳の外側にある複雑なひだ状の構造(耳介)は、単なる飾りではない。音波が耳介のひだに当たって反射する際、音源の方向によって微妙な時間差や音色の変化が生まれる。
脳はこのわずかな差を手がかりに、音が上下前後のどこから来ているかを判断している。左右の判別は両耳の時間差で可能だが、上下の判別には耳介の形状が不可欠とされている。
温度感覚には「温かい」と「冷たい」で別のセンサーがある
皮膚が温度を感じるとき、「温かさ」と「冷たさ」はそれぞれ別の受容体で検出されている。冷たさを感知するセンサーの方が密度が高く、そのため人は温かさより冷たさに敏感だ。
ミントを食べるとスーッと感じるのは、メントールが冷覚受容体(TRPM8)を直接刺激するためである。実際の温度変化がなくても冷たさを感じる、感覚の面白いトリックだ。
人間は実は磁気を感じる能力を持つ可能性がある
渡り鳥が地磁気を感じて方角を知る「磁覚」は有名だが、人間にもその痕跡があるかもしれない。2019年の研究で、磁場の変化に対して人間の脳波が反応することが確認された。
ただしこの反応は無意識的なもので、方角を知覚できるレベルではないとされている。進化の過程で退化した感覚の名残なのか、今も何らかの役割を果たしているのかは未解明である。
網膜の視細胞は光を受けると化学反応で信号を出す
目に入った光が「映像」として認識されるまでには化学反応が必要だ。網膜の視細胞に含まれるロドプシンという色素が光を受けると構造が変化し、それが電気信号に変換されて脳に送られる。
この反応は非常に高感度で、理論上は光子1個でも検出可能だとされている。暗闇に慣れるのに時間がかかるのは、ロドプシンが再合成されて感度が回復するまでに時間を要するためだ。
味覚は体調や加齢によって変化する
風邪のときに食べ物の味が薄く感じるのは、鼻が詰まって嗅覚が低下するためだ。味覚の約80%は実際には嗅覚に依存しているとされている。
また加齢に伴い味蕾の数は減少し、70代では若い頃の約3分の2程度になる。特に塩味と苦味の感度が低下しやすく、高齢者が味付けを濃くしがちなのはこの生理的変化が一因になっている。
共感覚は文字に色が見える特殊な知覚現象
数字を見ると特定の色が見える、音を聞くと形が浮かぶ――このように異なる感覚が自動的に結びつく現象を「共感覚」という。人口の約4%に何らかの共感覚があるとされている。
共感覚は脳の異なる感覚領域間の結合が通常より強いために起きると考えられている。芸術家や音楽家に多いという報告もあり、創造性との関連が研究されている。
聴覚は眠っている間も機能し続けている
視覚はまぶたを閉じれば遮断できるが、聴覚にはそのような仕組みがない。睡眠中も耳は音を拾い続けており、脳が「危険ではない」と判断した音を無意識にフィルタリングしている。
目覚まし時計で起きられるのも、自分の名前を呼ばれると目が覚めるのも、この聴覚フィルタリングが機能しているおかげだ。進化的には、睡眠中の外敵察知に重要な生存メカニズムだったと考えられている。
人は人生の約3分の1を眠って過ごす
80年生きるとすると、そのうち約26〜27年は眠っている計算になる。人生の約3分の1を睡眠に費やすという事実は、それだけ睡眠が生存に不可欠であることを示している。
すべての哺乳類、鳥類、爬虫類に睡眠に相当する行動が見られることからも、睡眠は進化の過程で一度も失われなかった根本的な生命機能だとわかる。
カフェインは眠気物質の受容体をブロックして効く
コーヒーで目が覚めるのは、カフェインが脳内の眠気物質「アデノシン」の受容体に先回りして結合し、眠気シグナルをブロックするためだ。アデノシン自体は消えていないので、カフェインの効果が切れると一気に眠気が押し寄せる。
カフェインの半減期は約5〜6時間とされている。午後3時に飲んだコーヒーのカフェインは夜9時でもまだ半分残っている計算になる。
深い睡眠中にグリンパティック系が脳を掃除する
2012年に発見された「グリンパティック系」は、睡眠中に脳内の老廃物を効率的に排出するシステムだ。深い睡眠時に脳細胞が縮小して隙間が広がり、脳脊髄液が流れ込んで老廃物を洗い流す。
アルツハイマー病に関与するアミロイドβもこの仕組みで除去される。睡眠不足が認知症リスクを高める一因として、このクリーニング機能の低下が指摘されている。
入眠時にビクッとする現象は脳の誤作動らしい
眠りに落ちる瞬間にビクッと体が跳ねる経験は多くの人にあるだろう。これは「入眠時ミオクローヌス」と呼ばれ、成人の約60〜70%が経験するとされている。
原因は完全には解明されていないが、覚醒から睡眠への移行中に脳が筋肉の弛緩を「落下」と誤認して反射的に筋肉を収縮させるためだと考えられている。疲労やカフェインの摂取で起きやすくなる。
体内時計のリセットには朝の光が最も効果的だ
人間の体内時計は正確に24時間ではなく、約24時間10〜15分とやや長めに設定されている。このずれを毎日修正しているのが朝の太陽光だ。
網膜にあるメラノプシン含有神経節細胞が光を検知し、視交叉上核という脳の時計中枢にリセット信号を送る。曇りの日でも屋外の光は室内照明の数倍〜数十倍の明るさがあるため、朝の散歩や通勤時の外出が体内時計の調整に有効とされている。
夢は一晩に4〜6回見ているが大半は忘れる
「夢を見ない」という人もいるが、実際にはほぼ全員が一晩に4〜6回の夢を見ている。記憶に残らないのは、レム睡眠中の夢が長期記憶に転送されにくいためだ。
目覚めた直後の約5分間が夢の記憶を保持できる限界とされており、すぐに別のことを考えると急速に忘れてしまう。夢の内容を記録したい場合は、枕元にメモを置いて起きた瞬間に書くのが有効だという。
睡眠中も心拍数や呼吸は自律神経が制御している
眠っている間、心臓や肺は止まらず動き続ける。これは自律神経が意識とは無関係に生命維持機能を制御しているためだ。
ノンレム睡眠中は副交感神経が優位になり、心拍数は起きているときより約10〜20%低下する。一方、レム睡眠中は心拍や呼吸が不規則になることがある。睡眠中の心拍パターンは睡眠の質を評価する指標としてウェアラブル端末でも活用されている。
ブルーライトは就寝前のメラトニン分泌を抑える
スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライト(約460〜480ナノメートルの短波長光)は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を強く抑制することが知られている。
就寝前2時間以内にブルーライトを浴びると、メラトニンの分泌開始が約1.5時間遅れるという研究もある。夜間モードやブルーライトカットの活用が推奨されるのはこの理由による。
新生児は1日約16〜17時間も眠る
生まれたばかりの赤ちゃんは1日の約70%にあたる16〜17時間を眠って過ごす。この大量の睡眠は、急速に発達する脳の神経回路形成に不可欠とされている。
新生児の睡眠はレム睡眠の割合が約50%と大人の約20%に比べて非常に高い。成長とともに必要な睡眠時間は減少し、成人では約7〜9時間、高齢者では約6〜7時間程度になる。
睡眠には免疫記憶を強化する働きがある
睡眠は脳の記憶だけでなく、免疫の記憶も強化している。ワクチン接種後にしっかり眠った人は、睡眠不足だった人に比べて抗体の産生量が約2倍多かったという研究がある。
深い睡眠中に分泌されるサイトカインが免疫細胞の活動を促進し、感染パターンの記憶を定着させるのだ。風邪を引いたときに眠くなるのも、体が回復のために睡眠を求める合理的な反応である。
時差ボケは体内時計と現地時間のずれで起きる
飛行機で時差のある地域に移動すると、体内時計と現地の昼夜サイクルにずれが生じる。これが時差ボケの正体だ。体内時計は1日に約1〜1.5時間しか調整できないため、時差が大きいほど回復に時間がかかる。
一般に東向きの移動の方が辛いとされる。これは体内時計を前倒しにする方が、後ろにずらすよりも難しいためだという。
寝言は睡眠のどの段階でも起こりうる
寝言はレム睡眠中に限らず、ノンレム睡眠を含むあらゆる睡眠段階で発生する。レム睡眠中は通常筋肉が弛緩して声が出にくいが、この抑制が不完全な場合に明瞭な寝言になることがある。
成人の約5%が頻繁に寝言を言うとされている。寝言の内容は見ている夢と関連していることもあるが、多くは意味のない断片的な言葉であり、本心を反映しているわけではないらしい。
睡眠不足は食欲を増進させるホルモンを増やす
睡眠が不足すると、食欲を増進させるホルモン「グレリン」が増加し、食欲を抑制するホルモン「レプチン」が減少することがわかっている。
この二重の変化により、睡眠不足の日は特に高カロリーな食品を欲しやすくなる。慢性的な睡眠不足が肥満リスクを高める一因はこのホルモンバランスの乱れにあるとされている。
クロノタイプは遺伝的に朝型か夜型かを左右する
朝に強い人と夜に活発な人がいるのは、怠けや習慣の問題ではなく「クロノタイプ」という遺伝的な体質による部分が大きい。体内時計を制御する時計遺伝子の変異が、活動のピーク時間帯に個人差を生んでいる。
人口の約25%が朝型、約25%が夜型、残りの約50%は中間型とされている。加齢とともに朝型に移行する傾向があり、思春期に夜型が強まるのも生物学的な現象である。
骨は絶えず古い組織を壊し新しく作り直している
骨は一度できたら変わらないと思われがちだが、実は常に「骨吸収」と「骨形成」を繰り返している。破骨細胞が古い骨を溶かし、骨芽細胞が新しい骨を作るというサイクルが続いているのだ。
成人の骨格は約3〜10年かけて全体が入れ替わるとされている。このリモデリングの仕組みのおかげで、骨折の修復が可能になるだけでなく、体の状態に合わせて骨の強度が調整される。
大腿骨は縦方向の圧力に最も強い骨だ
太ももの骨である大腿骨は人体で最も大きく、縦方向(軸方向)に非常に高い強度を持つ。その圧縮強度はコンクリートと同等かそれ以上ともいわれる。
大腿骨の断面は中空の管状構造をしており、材料を節約しながら高い強度を実現している。この構造は人工物のチューブ設計にも応用されており、自然の構造工学の精巧さを示す一例とされている。
足の骨は全身の約25%を占める
成人の骨の総数は約206本だが、そのうち足1本あたり26本の骨が集まっている。両足合わせると52本で、全身の骨の約25%が足に集中していることになる。
これほど多くの骨が足に必要な理由は、地面の凹凸に合わせて柔軟に対応しながら体重を支えるためだ。足のアーチ構造も複数の骨と靭帯が連携して形成されており、歩行や走行の衝撃を吸収する役割を担っている。
宇宙飛行士は無重力で骨密度が急速に低下する
骨は重力に逆らって体を支えるストレスによって強く維持されている。宇宙ステーションでの長期滞在では重力がほぼゼロのため、骨に負荷がかからず、骨密度が1ヶ月あたり約1〜2%低下するとされている。
これは地上で起こる骨粗しょう症の進行速度よりもはるかに速い。宇宙飛行士が帰還後に激しい運動をすぐに行えない理由の一つがこれだ。骨を強く保つためには、日常的な運動と重力刺激が欠かせない。
軟骨には血管がなく栄養を拡散で受け取る
関節の表面を覆う軟骨は、血管を持たない組織だ。そのため栄養素は関節液から直接しみ込む「拡散」という方法で供給される。
血流による補給ができないため、軟骨は一度傷つくと修復が非常に遅い。これが膝などの関節軟骨の損傷が治りにくい理由である。適度な運動は関節液の循環を促し、軟骨への栄養供給を助ける効果があるとされている。
骨格の形は遺伝だけでなく生活習慣でも変わる
骨の基本的な形は遺伝によって決まる部分が大きいが、成長期の運動・姿勢・栄養状態によっても骨の形や密度は変化する。骨は使われ方に応じて形を最適化する「ウォルフの法則」が知られている。
たとえばテニス選手のラケットを使う腕の骨は、反対側の腕より太くなることが多い。このことは、後天的な習慣が骨格に与える影響の大きさを物語っている。
頭蓋骨は複数の骨が縫合でつながっている
頭蓋骨は一つの骨ではなく、約22個の骨が「縫合」と呼ばれる複雑な継ぎ目でつながった構造だ。赤ちゃんの頭に触れると柔らかい「大泉門」があるが、これは骨がまだ完全につながっていない部分である。
出産時に産道を通りやすくするため、また生後の急速な脳の成長に対応するため、骨がすぐには融合しない仕組みになっている。縫合は成長とともに徐々に骨化し、成人後はほぼ固定されるとされている。
脳の情報処理速度は最大で毎秒120メートル
神経信号はどれくらいの速さで伝わるのだろうか。脳の神経線維のうち、太くてミエリン鞘に包まれた有髄神経では、信号が最大で毎秒約120メートルの速度で伝わるとされている。
これは時速に換算すると約430キロメートルにもなる。一方、細い無髄神経では毎秒1メートル以下になることもある。同じ脳の中でも、情報の種類によって伝達速度が大きく異なるのだ。
セロトニンの約90%は腸で作られている
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンだが、実は脳よりも腸で多く産生されている。体内のセロトニンの約90%は腸の細胞で作られているという。
腸で作られたセロトニンは直接脳に届くわけではなく、主に腸の働きを調整する役割を担う。しかし腸内環境が整うと脳内のセロトニン産生にも好影響を与えることが研究で示されており、腸と脳が密接につながっていることがわかる。
大脳皮質を広げると新聞紙1枚分の面積になる
脳の表面には無数のシワがある。このシワがあるおかげで、大脳皮質は頭蓋骨の中に折りたたまれて収まっている。
もし大脳皮質を広げると、約2500平方センチメートル、ほぼ新聞紙1枚分の面積になるとされている。シワのない平らな脳では同じ容積に収まらないため、脳は効率よく表面積を稼ぐためにこの複雑な形状を進化させたと考えられている。
脳は生後2年間で体積がほぼ3倍になる
生まれたばかりの赤ちゃんの脳は約350グラムだが、2歳頃までに約1000グラムへと急激に成長する。この時期、神経細胞同士のつながり(シナプス)が爆発的に増加し、脳の回路が形成されていく。
この急成長期に外部からの刺激や経験が脳の発達を大きく左右するとされている。言語・運動・感情の発達において、幼少期の環境が特に重要な理由はここにある。
扁桃体は感情の警報装置として機能する
脳の奥深くにある扁桃体は、アーモンドほどの大きさしかないが、恐怖や不安といった感情の処理に重要な役割を果たす。危険を察知すると、扁桃体は瞬時に体に警戒信号を送り出す。
この反応は理性的な判断よりも速いため、「ヘビだ!」と認識する前に体が飛びのくことがある。扁桃体の素早い反応は生命を守るための仕組みだが、現代ではストレスやトラウマ反応の原因にもなりやすい。
前頭前野は成人になっても発達し続ける
判断・計画・衝動の抑制を担う前頭前野は、脳の中で最も遅く成熟する領域だ。完全に発達が完了するのは25歳前後とされている。
これは10代の若者が衝動的な行動をとりやすい理由の一つとして挙げられることもある。前頭前野は学習や経験によっても変化するため、大人になっても日々の思考や行動の積み重ねで少しずつ形成されていくという。
海馬は新しい記憶を作る脳の「一時保管庫」
タツノオトシゴに形が似ているとして「海馬」と名付けられた脳の部位は、新しい情報を一時的に保存し、長期記憶へと変換する働きを担っている。
海馬が損傷すると、新しい出来事を覚えられなくなることが知られている。一方、以前に学んだことや感情的な記憶は別の部位に保存されるため、長期記憶は比較的保たれることが多い。睡眠中に海馬が活動して記憶を整理・定着させる仕組みも注目されている。
赤血球は核を持たない特殊な細胞だ
ほとんどの細胞には核(DNA情報を収めた司令塔)があるが、成熟した赤血球には核がない。核を失うことで細胞内にヘモグロビンを詰め込む空間を最大限に確保し、酸素運搬効率を高めているのだ。
核がないため自己修復やタンパク質合成の能力も持たず、赤血球の寿命は約120日とされている。古くなった赤血球は脾臓や肝臓で分解・回収される。
アポトーシスは細胞が自らを消去するプログラムだ
細胞には「プログラムされた細胞死」とも呼ばれるアポトーシスという仕組みがある。体にとって不要になった細胞や、DNA損傷を受けた危険な細胞が、自ら穏やかに消去されるプロセスだ。
炎症を起こさずに細胞を消去できるため、周囲の組織に影響を与えにくい。胎児の指が形成されるときに指の間の組織が消えるのも、アポトーシスによるものだ。がん細胞はこのアポトーシスが正常に機能しないため無限に増殖し続けるとされている。
幹細胞は異なる種類の細胞に分化できる万能細胞
幹細胞は自己複製しながら、骨・筋肉・神経など特定の種類の細胞へと分化できる能力を持つ細胞だ。骨髄に存在する造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板のすべてを作り出せる。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は成熟した細胞を初期化した幹細胞で、再生医療への応用が世界中で研究されている。日本人研究者の山中伸弥氏はこの発見で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
細胞分裂のたびにDNAはコピーされ誤りが生じることもある
細胞が分裂するとき、約30億塩基対からなるDNAが丸ごとコピーされる。コピーの精度は非常に高く、エラー率は約10億分の1程度とされているが、それでも1回の分裂で数件の誤りが生じることがある。
多くの場合は修復機構が誤りを検出して修正するが、修復しきれないと変異として蓄積する。この変異の蓄積が老化やがんの発生と関係することが知られている。
神経細胞は基本的に一生分裂しない細胞だ
ほとんどの細胞は一定のサイクルで分裂・入れ替わりを繰り返すが、脳の神経細胞(ニューロン)は生まれてからほとんど分裂しないとされている。このため、大量に失われると補充が困難だ。
脳の一部(海馬など)では成人後も新しいニューロンが生まれるという「神経新生」の研究がある一方、その規模と意義については現在も議論が続いている。ニューロンを長く健康に保つことが脳の機能維持に重要とされる理由がここにある。
白血球は体に侵入した異物を認識して攻撃する
白血球は免疫を担う細胞の総称で、好中球・マクロファージ・リンパ球など複数の種類が連携して機能する。体内に細菌やウイルスが侵入すると、白血球が異物を識別して攻撃・除去する。
好中球は最初に感染部位へ集まり直接攻撃を担う。マクロファージは異物を取り込んで消化しながらT細胞へ情報を伝える。この協調的な防衛システムによって、日々無数の感染リスクから体が守られている。
細胞膜は脂質の二重層で選択的に物質を通す
細胞は「細胞膜」という薄い膜で包まれており、その構造は脂質分子が二重に並んだ「脂質二重層」だ。この膜はただの仕切りではなく、特定の物質だけを選択的に通過させる「半透過性」を持つ。
たとえば酸素・二酸化炭素・水は自由に通れるが、ナトリウムやカリウムなどのイオンは専用のタンパク質チャネルを通じてのみ出入りできる。この選択透過性が細胞内の環境を一定に保つ鍵となっている。
水溶性ビタミンは余分な分が尿として排出される
ビタミンには水に溶ける「水溶性」と、油に溶ける「脂溶性」の2種類がある。ビタミンCやビタミンB群などの水溶性ビタミンは体内に蓄積しにくく、過剰に摂取した分は尿として体外に排出される。
このため、水溶性ビタミンの過剰摂取による毒性リスクは比較的低いとされる。一方で毎日の食事から継続的に補う必要があるという側面もある。
タンパク質は消化されてアミノ酸として吸収される
食事から摂ったタンパク質は、胃や小腸で消化酵素によってアミノ酸に分解され、小腸から吸収される。その後、体内で必要なタンパク質に再合成される。
つまり、どれほど良質なタンパク質を食べても、そのまま体の組織になるわけではない。分解・再構築のプロセスを経て初めて利用されるため、食事のタンパク質の「質」と「量」の両方が重要とされている。
糖質は脳の唯一のエネルギー源ではなくなることがある
脳のエネルギー源はブドウ糖(グルコース)が基本とされているが、絶食や極端な糖質制限が続くと、肝臓が脂肪を分解して「ケトン体」を作り出し、これが脳のエネルギー源として機能するようになる。
この状態を「ケトーシス」という。脳はブドウ糖のみしか使えないわけではなく、飢餓状態への適応として代替エネルギーを利用できる柔軟さを持っているのだ。
亜鉛は免疫・味覚・傷の修復に欠かせないミネラル
亜鉛は体内で300種類以上の酵素反応に関わるとされているミネラルだ。免疫細胞の働きを支える・傷の治癒を促進する・味覚を正常に保つなど、幅広い生理機能に関与している。
亜鉛が不足すると味覚障害・免疫低下・皮膚の荒れなどが起こりやすくなる。牡蠣・牛肉・ナッツ類に多く含まれており、植物性食品よりも動物性食品からのほうが吸収されやすいとされている。
食事の順番が血糖値の上がり方に影響する
同じ食事でも食べる順番によって食後の血糖値の上がり方が変わることが知られている。野菜・タンパク質・脂質を先に食べてから炭水化物を食べると、ご飯から先に食べた場合より血糖値の急上昇が抑えられるとされている。
これは食物繊維やタンパク質が消化管の動きを緩やかにし、糖の吸収速度を遅らせるためと考えられている。「ベジタブルファースト」と呼ばれるこの食事法は、血糖管理の観点から注目されている。
オメガ3脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸
脂肪はすべて体に悪いわけではない。EPAやDHAを含むオメガ3脂肪酸は、体内で合成できないため食事から摂る必要がある「必須脂肪酸」だ。
オメガ3脂肪酸は細胞膜の構成成分となるほか、炎症を抑える働きや脳の神経機能をサポートする効果が研究されている。青魚(サバ・イワシ・サンマなど)や亜麻仁油・えごま油に多く含まれている。
腸内細菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作る
人が消化できない食物繊維は、腸内細菌の重要なエサとなる。腸内細菌が食物繊維を発酵・分解すると、「酪酸」などの短鎖脂肪酸が生産される。
この短鎖脂肪酸は大腸の粘膜細胞のエネルギー源になるほか、腸壁を保護したり免疫調節に関わったりする役割が研究されている。食物繊維が「第6の栄養素」と呼ばれる理由の一つがここにある。
膵臓はインスリンとソマトスタチンを同時に作る
膵臓は消化酵素を腸へ分泌する「外分泌」と、血糖を調整するホルモンを血液へ分泌する「内分泌」という2つの機能を持つ臓器だ。
内分泌機能を担うランゲルハンス島には複数の細胞が共存しており、血糖を下げるインスリン(β細胞)と血糖を上げるグルカゴン(α細胞)、そして両者を調節するソマトスタチン(δ細胞)が分泌される。この精密な連携によって血糖値が一定の範囲に保たれている。
皮膚は体の最大の臓器で約1.6〜2平方メートルある
皮膚は臓器の一つとして数えられており、成人では約1.6〜2平方メートルの面積を持ち、体重の約16%を占めるとされている。最大の臓器である。
皮膚は外部からの異物・紫外線・乾燥を防ぐバリアとして機能するだけでなく、体温調節・感覚受容・ビタミンD合成など多岐にわたる役割を担っている。わずか数ミリの薄さの中に、汗腺・皮脂腺・毛包・神経・血管が緻密に詰まっている。
肝臓は部分切除されても再生する唯一の臓器
肝臓は約70%を切除しても数ヶ月で元の大きさに戻るとされており、再生能力を持つ臓器として知られている。生体肝移植が可能なのはこの特性のおかげだ。
この再生は細胞が増殖して元の機能を回復するものであり、厳密には完全な「再生」ではなく「代償性増殖」と呼ばれる。それでも他の臓器にはほとんどみられない能力であり、医学的にも注目されている。
心臓は自分でリズムを刻む電気系統を持つ
心臓は脳からの命令がなくても自律的に拍動を続けられる。この仕組みを担うのが「洞房結節」と呼ばれる心臓内の特殊な細胞群で、電気信号を自動的に発生させる「ペースメーカー」として機能する。
人工ペースメーカーはこの機能が低下したときに代わりを務める医療機器だ。心臓が体から取り出されても適切な環境下で一定時間拍動を続けることができるのは、この自律的な電気系統があるためだ。
副腎はストレス時にアドレナリンを即座に分泌する
腎臓の上に乗る小さな臓器「副腎」は、ストレスや危機的状況に直面したときに素早くアドレナリンを血液中に放出する。これが「闘争か逃走か」の反応を引き起こす。
アドレナリンの作用で心拍数が上がり、筋肉への血流が増え、瞬間的に体の能力が高まる。副腎はアドレナリンのほかにもコルチゾール・アルドステロンなど複数のホルモンを産生しており、体のバランス維持に欠かせない臓器だ。
小腸の内壁には絨毛があり吸収面積を広げている
小腸の内壁には「絨毛」と呼ばれる細かい突起が無数に並んでいる。さらに絨毛の表面には「微絨毛」という極めて細かい突起があり、これらが重なることで吸収面積は約200平方メートルにも達するとされている。
これはテニスコートの約1面分に相当する。この広大な面積によって食べ物から栄養素を効率よく吸収することが可能になっている。全長約6メートルの小腸に、これだけの吸収面積が凝縮されているのだ。
膀胱は伸縮性の高い筋肉でできた袋状の臓器
膀胱は尿を一時的に蓄える袋状の臓器で、空のときはこぶし程度の大きさだが、充満すると約300〜500ミリリットルを蓄えられるまで伸びる。この伸縮性は「排尿筋」という平滑筋と特殊な移行上皮細胞によって生まれている。
膀胱が約150〜200ミリリットル程度たまると尿意を感じ始め、脳が排尿のタイミングを調整する。この感覚は無意識に調整されているが、意識的に抑制することも一定の範囲では可能だ。
人間の耳は約20ヘルツから2万ヘルツを聴ける
人間が聴こえる音の周波数は、低音域の約20ヘルツから高音域の約20000ヘルツまでとされている。犬は最大約65000ヘルツ、コウモリは約100000ヘルツまで聴き取れるため、人間の聴覚範囲は動物の中では特別広いわけではない。
年齢とともに高音域の聴力は低下していく。20代では問題なく聴こえる高い音が、40代以降では聴き取りにくくなることが多い。
目の盲点は脳が周囲の情報で補完している
網膜には視神経が集まる部分があり、そこには視細胞がないため「盲点」と呼ばれる。本来ならその部分だけ視野に穴が空くはずだが、日常生活ではそれを感じない。
脳が周囲の視覚情報をもとに盲点の空白を自動的に埋めているからだ。この補完処理は無意識に行われるため、特別な検査をしなければ自分に盲点があることにさえ気づかない。
嗅覚は約1万種類の匂いを嗅ぎ分けられる
人間の嗅覚受容体は約400種類あり、これらの組み合わせによって約1万種類もの匂いを識別できるとされている。訓練を積んだ調香師などはさらに多くの匂いを区別できるという。
嗅覚は視覚や聴覚と異なり、信号が直接大脳辺縁系(感情・記憶を司る領域)に届く。このため、特定の匂いが過去の記憶や感情を鮮明に呼び起こすことがある。この現象は「プルースト効果」とも呼ばれる。
舌の味蕾は約10日ごとに新しく生まれ変わる
舌の表面には「味蕾」と呼ばれる味覚センサーが約1万個あり、それぞれが甘味・酸味・塩味・苦味・うまみを感知している。味蕾の細胞は約10日程度のサイクルで入れ替わるとされている。
加齢とともに味蕾の数は減少し、高齢になると若い頃より味を感じにくくなることがある。これが「高齢者が味の濃い食べ物を好む」傾向の一因といわれている。
暗闇に慣れると目の感度は数千倍に上がる
明るい場所から暗い場所に入ったとき、最初は何も見えないが、しばらくすると徐々に見えるようになる。これを「暗順応」という。
この過程では網膜の桿体細胞が「ロドプシン」という感光色素を蓄積し、光への感度を高めていく。完全な暗順応には約30分かかり、その際の感度は明るい状態の数千倍にも達するとされている。
皮膚は温度・圧力・痛みを別々のセンサーで感じる
皮膚の感覚は「触覚」と一括りにされがちだが、実際には温冷・圧力・振動・痛みをそれぞれ専用の受容体が感知している。たとえば冷感を感じるクラウゼ小体と温感を感じる自由神経終末は、同じ皮膚の中でも別々に分布している。
このため、強い冷刺激が逆に痛みとして感じられることもある。皮膚感覚の複雑な仕組みは、体を環境の変化から守るために精巧に設計されているのだ。
内耳には聴覚と平衡感覚の両方が収まっている
耳は音を聴くだけでなく、体のバランスを保う機能も担っている。内耳には音を感知する蝸牛と、平衡感覚を担う半規管・耳石器が隣接して存在する。
半規管は3つあり、それぞれ異なる方向の回転運動を感知する。乗り物酔いは、目からの視覚情報と内耳の平衡感覚がずれることで起こると考えられている。
仮眠は15〜20分が認知機能の回復に最適だ
昼間の短い仮眠(ナップ)は集中力や記憶力の回復に効果的とされている。研究によれば、15〜20分の仮眠が認知機能の向上に最も効果的であるという。
これより長くなると深い睡眠段階に入り、起きた後に「睡眠惰性」と呼ばれる眠気やだるさが残りやすくなる。仮眠前にコーヒーを飲む「コーヒーナップ」は、カフェインが効き始めるタイミングと目覚めが重なるため特に効率がよいとされている。
睡眠不足が続くと判断力が著しく低下する
17〜19時間連続して起きていると、判断力・反応速度・注意力が血中アルコール濃度0.05%相当の状態と同じレベルに低下するとされている研究がある。
さらに厄介なのは、睡眠不足の人ほど「自分は眠くない」と感じやすいことだ。慢性的な睡眠不足では、低下した状態が「普通」として認識されるため、自覚なく判断力が落ちたまま生活しているケースがある。
人は眠っている間も規則的に体を動かしている
健康な人は一晩に約20〜40回ほど寝返りを打つとされている。この無意識の体動は、同じ体勢を続けることで生じる血流の滞りや皮膚への圧迫を防ぐ重要な役割を担っている。
寝返りが適切に行えない状態(麻痺・深い鎮静など)では褥瘡(床ずれ)が生じやすくなる。睡眠中も体は自律的にメンテナンスを続けているのだ。
メラトニンは光が減ると分泌が増える睡眠ホルモン
脳の松果体から分泌されるメラトニンは、眠気を促すホルモンだ。光の刺激が弱まると分泌量が増加し、夜になると眠くなる仕組みを作っている。
スマートフォンやパソコンの画面が発するブルーライトは、脳に「まだ昼間だ」と誤認させてメラトニン分泌を抑制するとされている。就寝前の強い光への曝露が睡眠の質を下げる理由がここにある。
睡眠中に身長が一時的に伸びる理由がある
人は朝起きたとき、夜眠る前よりわずかに身長が高い。これは重力から解放された椎間板が水分を吸収して少し膨らむためで、その差は約1〜2センチメートルとされている。
日中に体を起こしている間は椎間板が体重で圧縮され、水分が少しずつ失われていく。この現象は成長期の子どもだけでなく成人にも起こる。宇宙飛行士が無重力環境に長くいると身長が増える現象も、同じメカニズムによるものだ。
動物によって必要な睡眠時間は大きく異なる
ゾウやキリンは1日約2〜4時間しか眠らないが、コアラやナマケモノは1日20時間以上眠るとされている。人間は一般的に7〜9時間が推奨されるが、動物の世界では睡眠時間は大きく幅がある。
この差は、食事の消化効率・捕食者の存在・体の大きさなど複数の要因によると考えられている。草食動物が短い睡眠で済ませることが多いのは、捕食者から狙われるリスクを減らすためとも解釈されている。
レム睡眠中は目が急速に動いているが体は麻痺している
REM(Rapid Eye Movement)睡眠中は眼球が急速に動き回り、脳活動は起きているときと似た状態になる。一方で体の主要な筋肉は一時的に麻痺した状態となる。
この筋肉の麻痺は夢の内容を行動で再現してしまわないための安全装置と考えられている。この仕組みが正常に働かないと、夢の内容に合わせて体が動く「レム睡眠行動障害」が起きることがある。
睡眠負債は週末の寝だめでは完全に返せない
平日に睡眠が不足した分を「睡眠負債」と呼ぶ。週末に長く眠ると一時的に回復感は得られるが、蓄積した睡眠負債を完全に解消するには単純な追加睡眠では足りないとする研究がある。
認知機能の完全な回復には数日間の十分な睡眠が必要とされる。また、週末だけ睡眠時間を変えると体内時計が乱れる「社会的時差ぼけ」が生じ、月曜日の朝に強い眠気を感じる原因になるとされている。
成人の骨は約206本、赤ちゃんは約300本
生まれたばかりの赤ちゃんの骨は約300個あるが、成長とともに骨同士が癒合して、成人になると約206個になる。特に頭蓋骨・脊柱・骨盤などで骨の癒合が起きる。
骨の数は個人差もあり、足に「種子骨」と呼ばれる余分な小骨を持つ人もいる。骨は固い構造物のようだが、実際には生きた組織で常に細胞が新陳代謝を行っており、約3年で骨のほぼすべての成分が入れ替わるとされている。
骨の強度はコンクリートより高い
骨は圧縮強度においてコンクリートより高く、花崗岩に匹敵するとされている。コラーゲン(タンパク質)とハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウム鉱物)の組み合わせが、硬さと柔軟性を兼ね備えた構造を生み出している。
コラーゲンだけだと柔らかすぎ、カルシウムだけだと脆くなる。この二つが組み合わさることで「曲げ強さ」と「圧縮強さ」を両立する、軽量かつ高性能な構造体になるとされている。
骨髄は赤血球・白血球・血小板を作る工場
骨の内部にある骨髄は血球を産生する重要な場所だ。赤血球・白血球・血小板のすべてが骨髄の造血幹細胞から作られる。1日に産生される赤血球の数は約2000億個にのぼる。
骨髄移植は白血病などの血液疾患の治療法として使われ、健康な人の骨髄(または末梢血幹細胞)を移植して患者の造血機能を回復させる。加齢とともに活発な「赤色骨髄」は脂肪を多く含む「黄色骨髄」に置き換わっていくとされている。
手首には8個の小さな骨がある
手首には「手根骨」と呼ばれる8個の小さな骨がある。これらの骨が組み合わさることで、手首の複雑な動き(曲げる・伸ばす・回す)が可能になる。
手・手首・前腕を合わせると27個の骨があり、人体全体(約206個)の約13%が手腕に集中している。精密な動作を可能にするために手は骨の数が多く、複雑な構造になっているとされている。
椎骨は7種類33個で背骨を構成する
背骨(脊柱)は頸椎7個・胸椎12個・腰椎5個・仙骨(5個が癒合)・尾骨(4個が癒合)の合計33個の椎骨で構成される。各椎骨の間には椎間板という軟骨があり、衝撃を吸収するクッションの役割を果たす。
朝の身長と夜の身長では最大約2センチの差があるとされている。日中の姿勢や重力で椎間板が圧縮されて身長が低くなり、就寝中の水平姿勢で回復するためだという。
人体で最も小さい骨は耳の中にある
人体で最も小さい骨は中耳にある「あぶみ骨」で、長さは約3ミリメートルしかない。つち骨・きぬた骨・あぶみ骨の3つが連なる耳小骨は、鼓膜の振動を内耳に伝える音の振動増幅器として機能する。
これらの耳小骨は胎生期に完成された後、生涯を通じてほぼ成長しない。胎児のうちから最終的なサイズになる珍しい骨だとされている。
骨は負荷がかかるほど強くなる性質がある
骨は機械的な負荷(重力・筋肉の引っ張りなど)に反応してリモデリング(再造形)を行い、より強くなる特性がある。「ウォルフの法則」として知られる現象だ。
宇宙飛行士が長期間の無重力環境にいると骨密度が低下するのはこのためだ。運動が骨粗鬆症の予防になるのも同じ原理で、適度な負荷が骨の形成細胞(骨芽細胞)を活性化させるとされている。
脳は体重の2%なのに消費エネルギーは20%
成人の脳は約1.4キログラムで体重の約2%しかないが、体全体が消費するエネルギーの約20%を常に消費している。主にニューロン(神経細胞)が情報を処理するためのグルコース(糖)を大量に必要とするためだ。
脳にはエネルギーを蓄える能力がほとんどないため、血流が止まると約10秒で意識を失い、数分で回復不能なダメージが生じるとされている。
脳には約860億個のニューロンがある
ヒトの脳には約860億個の神経細胞(ニューロン)があり、それぞれが最大で約1万個もの他のニューロンとシナプスで接続されている。その接続数の総数は数百兆とも言われる。
かつては「脳のニューロンは再生しない」とされていたが、海馬など一部の領域では大人になっても新しいニューロンが生まれることが分かってきた。脳の可塑性(神経の柔軟な再編成)は生涯を通じて続くとされている。
ドーパミンは「快楽」ではなく「期待」の物質
ドーパミンは「快楽物質」と呼ばれることが多いが、正確には「報酬の予測・動機づけ」に関わる神経伝達物質だ。何か良いことが起きる「期待」の段階で多く分泌され、実際に報酬を得たときの分泌量は期待以下になることもある。
この仕組みがスマートフォンやゲームの依存性の一因とされている。次の通知や次のレベルへの「期待」がドーパミンを放出させ続けることで、ついついやめられなくなるという。
記憶には短期記憶と長期記憶の2種類がある
記憶は大きく「短期記憶」と「長期記憶」に分類される。短期記憶(ワーキングメモリ)は数秒〜数十秒しか保持されず、一度に保持できる情報は約7±2個とされている(ミラーの法則)。
電話番号を見てすぐ入力できるのが短期記憶の例だ。繰り返しや感情と結びつくことで長期記憶に移行する。長期記憶には意識的に思い出せる「陳述記憶」と、自転車の乗り方のような「手続き記憶」があるとされている。
ミラーニューロンは他者の行動を脳内で模倣する
他人がりんごを食べるのを見ているとき、観察者の脳内でも食べる動作に関連するニューロンが活動することが観察されている。これを「ミラーニューロン」(鏡像神経細胞)という。
共感能力や言語習得、他者の意図の読み取りにも関係するとされている。あくびが感染するのもこの仕組みが関わっているという説がある。ただし人間でのミラーニューロンの研究はまだ発展途上の分野だという。
脳の左右は機能分担しているが連携もしている
脳の左半球は言語処理・論理的思考、右半球は空間認識・創造的思考に関わるという分業がある。しかしこれは大まかな傾向であり、「右脳人間・左脳人間」という二分法は科学的には過度な単純化とされている。
左右の大脳半球は「脳梁」という約2億本の神経線維の束でつながっており、常に双方向で情報交換している。この連携があってこそ複雑な認知活動が可能になるとされている。
夢を見るのはREM睡眠中の脳の活動
睡眠中のREM(急速眼球運動)睡眠の段階で、脳は覚醒時に近い活発な活動をしており、このときに鮮明な夢を見る。体の筋肉はほぼ麻痺した状態になるため、夢の内容に合わせて体が動いてしまわない仕組みになっている。
夢は記憶の整理・感情処理・問題解決に役立つとも言われる。1晩に複数回のREM睡眠が訪れ、明け方ほどREM睡眠の時間が長くなるとされている。
脳は痛みを感じない唯一の臓器
意外なことに、脳自体には痛みを感じる神経(痛覚受容器)がない。脳外科手術で頭蓋骨を開けた状態でも、患者は脳に直接触れられても痛みを感じないとされている。
頭痛の多くは血管や筋肉・髄膜(脳を覆う膜)が痛んでいるのであり、脳そのものが痛いのではない。この性質を利用して、脳外科手術では患者を意識のある状態で行うこともあるという。
人体の細胞数は約37兆個
成人の体を構成する細胞の数は約37兆個と推定されている。この数は2013年の研究による推算で、かつての「60兆個」という説から下方修正された。37兆という数字は、全世界の砂浜の砂の数にも匹敵するとも言われるほど膨大だ。
細胞は種類によって寿命が大きく異なる。小腸の上皮細胞は約2〜4日、赤血球は約120日、神経細胞(ニューロン)は生涯を通じてほぼ同じ細胞が使われるとされている。
細胞のDNAを伸ばすと約2メートルになる
1個の細胞の核に収められているDNAをすべてほどいてつなぐと、約2メートルの長さになる。細胞の核の直径は約6マイクロメートルしかないため、約100万分の1に折りたたまれている計算になる。
この折りたたみを担うのが「ヒストン」というタンパク質だ。体全細胞のDNAを一列につなぐと約740億キロメートルになり、地球と太陽を往復に換算すると約250回分に相当するという。
ミトコンドリアはかつて独立した細菌だった
細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアは、約15〜20億年前に原始的な細胞に取り込まれた好気性細菌が起源とする「細胞内共生説」が広く支持されている。
その証拠として、ミトコンドリアは細胞の核とは独立したDNAを持ち、独自の分裂をする。また細胞とは別に細菌型の二重膜構造を持つ。ミトコンドリアのDNAは母系のみから受け継がれるため、母系の系譜を遡る「ミトコンドリアDNA系統解析」に使われるという。
T細胞とB細胞は免疫の指揮官と抗体工場
免疫を担うリンパ球には大きくT細胞とB細胞がある。T細胞は感染細胞を直接攻撃したり(キラーT細胞)、他の免疫細胞を調節したり(ヘルパーT細胞)する司令塔の役割を担う。B細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生する「抗体工場」だ。
ワクチンの仕組みは、病原体の一部を体に覚えさせてこれらの免疫細胞を事前に訓練することだ。再感染時に素早く大量の抗体を産生できる「記憶細胞」を作るとされている。
細胞の老化はテロメアの短縮と関係する
染色体の末端にある「テロメア」と呼ばれる繰り返し配列は、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなる。テロメアがある限界まで短くなると細胞はそれ以上分裂できなくなる(複製老化)。
このテロメアの短縮が細胞老化・個体の老化に関係するとされている。一方、テロメアを延長する酵素「テロメラーゼ」はがん細胞に活発で、無限増殖の一因になっているという。
がん細胞は無限に増殖し続ける細胞
正常な細胞は分裂回数に上限があり(ヘイフリック限界)、老化すると分裂を停止するかアポトーシス(細胞死)を起こす。がん細胞はDNAに変異が生じて細胞分裂を制御する機構が壊れ、無限に増殖し続ける。
がん細胞自体は必ずしも急速に増殖するわけではなく、免疫監視を回避する能力や転移能力を獲得することが問題だとされている。人体は1日に数千個ものがん細胞を免疫が排除しているという。
腸上皮細胞は約2〜4日で全部入れ替わる
腸の内壁を覆う上皮細胞は、食物・消化液・細菌などに常にさらされる過酷な環境にあるため約2〜4日という非常に短いサイクルで入れ替わる。人体の中で最も細胞の更新速度が速い組織のひとつだ。
古い細胞は腸管内に脱落して排泄される。この高速な更新のために腸は大量の栄養素とエネルギーを消費し、腸の健康が全身の栄養状態に直結するとされている。
人間はビタミンCを体内で合成できない
多くの哺乳類はビタミンCを体内で合成できるが、ヒトと他の霊長類・モルモット・コウモリなどは合成に必要な酵素(L-グロノラクトン酸化酵素)の遺伝子が壊れており、食事から摂取するしかない。
進化的に果物や野菜を豊富に食べる環境では合成能力が不要になったためと考えられている。かつての航海士がかかった壊血病は、長期の航海で新鮮な野菜・果物を食べられなかったことによるビタミンC不足が原因だという。
鉄分は動物性食品からの方が吸収率が高い
食品中の鉄には「ヘム鉄」(肉・魚などの動物性食品)と「非ヘム鉄」(野菜・豆類などの植物性食品)の2種類がある。ヘム鉄の吸収率は約20〜30%と高く、非ヘム鉄は約2〜5%と低い。
ビタミンCを同時に摂ると非ヘム鉄の吸収率が上がる。一方、タンニン(お茶・コーヒー)はカルシウム・食物繊維と同様に鉄の吸収を妨げるとされている。食事の組み合わせが栄養吸収効率に大きく影響するという。
食物繊維は消化されないが腸内細菌の栄養になる
食物繊維は人間の消化酵素では分解できないが、大腸の腸内細菌がこれを発酵させて「短鎖脂肪酸」(酪酸・プロピオン酸など)を産生する。この短鎖脂肪酸が腸の粘膜細胞のエネルギー源になり、腸の健康を維持する。
水溶性食物繊維(オートミール・豆類など)は血糖値の急上昇を抑える効果もある。食物繊維の摂取量が腸内フローラの多様性と豊かさに直結するとされている。
必須アミノ酸は体内で合成できない9種類
タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あるが、そのうち9種類(バリン・ロイシン・イソロイシン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・トリプトファン・スレオニン・ヒスチジン)は人体では合成できず、食事から摂る必要がある。これが「必須アミノ酸」だ。
動物性タンパク質(肉・魚・卵・乳製品)はこれらをすべて含む「完全タンパク質」だ。植物性食品でも複数を組み合わせることで必須アミノ酸をすべて摂れるとされている。
ビタミンDは日光を浴びると皮膚で作られる
ビタミンDは食事から摂れるが、皮膚が紫外線(UVB)を受けるとコレステロールから合成されるという特殊なビタミンだ。日本では日照時間が少ない冬季に不足しやすい。
ビタミンDはカルシウムの腸からの吸収を促進し、骨の健康に不可欠だ。免疫機能や筋肉機能にも関与するとされている。屋内で過ごす時間が増えた現代では、多くの人がビタミンD不足傾向にあるという。
脂溶性ビタミンは過剰摂取すると蓄積する
ビタミンには水に溶ける「水溶性ビタミン」(B群・C)と、脂肪に溶ける「脂溶性ビタミン」(A・D・E・K)がある。水溶性ビタミンは過剰摂取しても尿で排泄されるが、脂溶性ビタミンは体の脂肪組織や肝臓に蓄積する。
特にビタミンAの過剰摂取は頭痛・吐き気・肝機能障害などを引き起こすことがある。サプリメントからの過剰摂取が問題になりやすく、食事からの摂取ではほぼ過剰にならないとされている。
カルシウムはビタミンDとマグネシウムが揃って吸収される
カルシウムの腸からの吸収にはビタミンDが不可欠だ。さらに骨に沈着させるためにはマグネシウムも必要で、3つが揃って初めて効率的に骨密度を高めることができる。
牛乳のみで骨が強くなるというイメージがあるが、日光浴でビタミンDを補い、ナッツや豆類でマグネシウムを摂ることも同様に重要とされている。日本人には慢性的なマグネシウム不足の傾向があるという。
心臓は1日に約10万回拍動する
成人の心臓は安静時に1分間に約60〜100回拍動し、1日では約10万回にもなる。1回の拍動で約70ミリリットルの血液を送り出すため、1日に送り出す血液の総量は約7000リットルにのぼる。
心臓は自律的に電気信号を発生する特殊な筋肉(刺激伝導系)を持っており、脳からの指令がなくても自ら動き続けることができる。移植された心臓が別の体内で動けるのはこの自律性のためだという。
肝臓は約500種類の機能を持つ多機能臓器
肝臓は人体最大の内臓(約1.5キログラム)で、解毒・タンパク合成・脂肪代謝・グルコース貯蔵・胆汁生成など約500種類もの機能を担うとされている。
肝臓は唯一「再生する臓器」としても知られ、手術で70%を切除しても残りから再生できる。「沈黙の臓器」とも呼ばれ、機能が30〜40%以下になるまで自覚症状が出にくい。定期的な健康診断が重要な理由のひとつだという。
肺の表面積はテニスコート1面分に相当する
肺の内部には「肺胞」と呼ばれる小さな袋が約3〜5億個あり、これを広げると表面積は約70〜100平方メートルとテニスコート1面分に匹敵する。この広い面積で酸素と二酸化炭素を素早く交換している。
肺胞の壁は厚さ約0.2マイクロメートルと非常に薄く、毛細血管と隣接しているため気体の交換が極めて効率よく行われるとされている。
胃酸のpHは1〜2でほぼ塩酸と同じ強さ
胃から分泌される塩酸は、pHが約1〜2という非常に強い酸性だ。これは工業用の塩酸と同等の酸性度で、食べ物の消化や細菌の殺菌に働く。
胃自身が溶けないのは、粘液細胞が分泌する厚いムチン層で内壁が保護されているためだ。胃潰瘍はこの粘液層が傷ついてバリアが崩れたときに起きるとされている。ストレスが胃に影響する理由のひとつに、ストレスによる粘液分泌の低下がある。
腸の長さは小腸と大腸を合わせると約9メートル
小腸の長さは約6〜7メートル、大腸は約1.5メートルで、合わせると約9メートル前後になる。小腸の内壁には「絨毛」と「微絨毛」という構造があり、これが表面積を実際の管の長さの約200倍に広げて栄養吸収を効率化している。
生前は腸を保持する腸間膜が緊張しているため長く見えないが、解剖後に腸間膜を切ると実際の長さに近く伸びるとされている。
腎臓は1日に約150リットルの血液を濾過する
腎臓は左右に1つずつあり、1日に約150リットルの原尿を作り出す。その後に水分・栄養素の大部分を再吸収し、最終的に約1〜2リットルの尿が排出される。
腎臓は血液中の老廃物の除去だけでなく、血圧の調節・赤血球産生ホルモン(エリスロポエチン)の分泌・ビタミンDの活性化など多様な機能を担う。片方の腎臓だけでも生存可能なため、生体腎移植(片方を提供)が可能だという。
脾臓は古くなった赤血球を処理するリサイクル工場
脾臓は赤血球の約120日の寿命が尽きたものを取り込んで分解する。赤血球中のヘモグロビンは分解されて胆汁の成分(ビリルビン)になり、鉄分は骨髄での新しい赤血球の産生に再利用される。
脾臓はリンパ球の産生・免疫応答・血液の貯蔵庫としての役割も持つ。手術で脾臓を摘出しても生存は可能だが、特定の細菌感染に対する免疫力が低下するとされている。
人間の目は3種類の色受容体で色を識別する
人間の目には赤・緑・青の光に反応する3種類の錐体細胞があり、これらの組み合わせでさまざまな色を識別している。色覚異常は特定の錐体細胞が欠損または機能が異なることで起き、日本人男性の約5%に見られるとされている。
一部の女性は4種類の錐体細胞を持つ「四色型色覚」を持つ場合があり、通常の人には区別できない色の微妙な違いを識別できると報告されているという。
耳の有毛細胞は一生で再生されない
内耳(蝸牛)の中の有毛細胞は音の振動を電気信号に変換する聴覚の核心的な細胞だ。人間ではこの細胞は約1万6000個しかなく、一度損傷すると再生されない。
大音量の音楽やヘッドフォンの長時間使用などで有毛細胞が破壊されると、その領域の聴力は二度と戻らない。鳥類や魚類は有毛細胞を再生できる。人間に同様の再生能力を持たせる研究が世界各地で進んでいるという。
嗅覚は唯一感情・記憶と直接つながる感覚
嗅覚は五感の中で唯一、大脳の感情処理や記憶に関わる「大脳辺縁系」と直接つながっている。他の感覚(視覚・聴覚など)は視床を経由してから脳に届くが、嗅覚は直接辺縁系に届く。
このため懐かしい匂いが強烈に記憶を呼び覚ます現象(プルースト効果)が起きる。コーヒーや母親の香りが強い感情を引き起こすのはこのダイレクトな神経回路のためだとされている。
味覚の基本は5種類、うまみも含まれる
味覚の基本は甘味・酸味・塩味・苦味の4種類とされていたが、現在は「うまみ」を加えた5種類が国際的に認められている。うまみはグルタミン酸などのアミノ酸や核酸に反応する味覚で、日本人研究者(池田菊苗)が1908年に昆布だしから発見した。
舌の特定部分が特定の味を感じるという「味覚地図」は科学的に支持されておらず、実際は舌全体で全種類の味を感じるとされている。
前庭感覚は「第六感」とも呼ばれる平衡感覚
内耳には聴覚(蝸牛)に加えて、平衡感覚を担う「前庭器官」がある。三半規管と耳石器で構成され、頭の動きや重力の方向を感知する。視覚・筋肉感覚と合わさってバランスを維持する。
目を閉じていても体の傾きを感じたり、暗闇で歩けるのはこの前庭感覚のおかげだ。乗り物酔いは視覚と前庭感覚の情報が一致しないときに起きる不一致から来るとされている。
皮膚の触覚受容体は場所によって密度が違う
皮膚の触覚受容体(メルケル盤・パチニ小体など)は体の部位によって密度が大きく異なる。指先や唇では1平方センチメートルあたりの受容体密度が最も高く、非常に細かい凹凸も識別できる。
指先の触覚分解能は約2〜3ミリメートルとされている。一方、背中の触覚分解能は数センチメートル程度しかない。点字が指先で読める理由はこの高密度の受容体のためだという。
痛みは体を守るための重要なシグナル
痛みは不快な経験だが、体に危険が生じていることを知らせる重要な防衛機能だ。先天性無痛症(痛みを感じない疾患)の人は怪我や感染症に気づかず、重篤な状況になりやすい。
痛みには「急性痛」(即時的な保護信号)と「慢性痛」(神経の過敏化によって続く痛み)がある。慢性痛は元の組織の損傷が治癒した後も続くことがあり、神経系のメカニズム自体が変化している状態だとされている。
睡眠は約90分周期のサイクルを繰り返す
睡眠は「ノンREM睡眠」と「REM睡眠」を約90分ごとに交互に繰り返す。1晩(7〜8時間)で約4〜5回のサイクルが起きる。ノンREM睡眠の深い段階(徐波睡眠)は就寝直後に多く、明け方に向かってREM睡眠の時間が長くなる。
90分の倍数の時間寝るとスッキリ目覚めやすいという考え方があるが、個人差があり起床タイミングの睡眠段階の方が重要だとされている。
睡眠中に脳は記憶を整理・定着させる
睡眠中、特に深いノンREM睡眠の段階で、海馬から大脳皮質へ記憶が転送・定着する。これを「記憶の固定化」といい、勉強や練習の直後に十分な睡眠をとることが学習効果を高める理由だ。
研究によると、一夜睡眠をとった後では不必要な記憶が選択的に削除され、重要な記憶がより強化されるとされている。「勉強して寝ると翌日覚えている」という経験はこの生理的なプロセスに基づくという。
体温が下がるタイミングで自然に眠くなる
入眠のカギは体の深部体温の低下だ。就寝2〜3時間前から深部体温が下がり始め、この低下が脳に「眠る時間」のシグナルを送る。入浴後に眠くなりやすいのは、お風呂で一時的に体温が上がった後に急激に下がるためだ。
就寝前に手足が暖かくなるのも、血管を開いて体表から熱を放散し深部体温を下げるためだという。靴下を履いて眠ると足先の放熱が妨げられ入眠を遅らせることがあるとされている。
睡眠不足は免疫機能を大幅に低下させる
6時間未満の睡眠が続くと風邪ウイルスへの感染リスクが約4倍に高まるという研究がある。免疫細胞(T細胞・NK細胞など)の活性は睡眠中に高まり、サイトカインなどの免疫物質が産生されるためだ。
睡眠不足が続くと集中力・判断力の低下だけでなく、肥満・糖尿病・心臓病のリスクも高まるとされている。睡眠は単なる休息ではなく、体の「メンテナンスタイム」だという。
成長ホルモンは眠り始めの深い睡眠に分泌される
成長ホルモンは1日を通じて少量分泌されているが、最大の分泌ピークは就寝後約1〜2時間の深いノンREM睡眠のときに起きる。子どもの身長の伸びを支えるだけでなく、大人でも組織の修復・脂肪代謝・筋肉の合成に働く。
「子どもは寝る子が育つ」という言葉は、成長ホルモンの分泌メカニズムから見ても根拠のあるものだとされている。夜更かしが多いとこのピーク分泌が妨げられるという。
概日リズムは24時間の体内時計
体内には約24時間周期の「概日リズム(サーカディアンリズム)」があり、睡眠・覚醒・体温・ホルモン分泌のパターンを調節している。光(主に朝の太陽光)が目に入ることで毎日リセットされる。
時差ぼけは体内時計と現地時間のズレから起きる。この概日リズムの分子メカニズム研究で、2017年にノーベル生理学・医学賞が授与されたとされている。体内時計は脳の視交叉上核(SCN)が制御しているという。
睡眠中に脳は有害な老廃物を洗い流している
睡眠中に脳の細胞が収縮して細胞間の隙間が広がり、脳脊髄液の流れが速くなる。この「グリンパティック系」と呼ばれる仕組みにより、アルツハイマー病と関連するアミロイドβタンパク質など有害な物質が除去される。
覚醒時は脳活動にエネルギーが使われるためこの洗浄機能が抑制される。睡眠不足が長期的に続くと有害物質が蓄積し、認知機能低下のリスクが高まるとされている。
人体の99%はたった6種類の元素でできている
人間の体は約37兆個の細胞で構成されているが、質量の99%はたった6種類の元素(酸素・炭素・水素・窒素・カルシウム・リン)でできている。最も多いのは酸素で、体重の約65%を占める。
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