「10秒から2秒へ」ラッシュ系ゲームの難易度カーブを決めるまで

計算ラッシュ・カラーパニック・方向パニックに共通する制限時間の設計。なぜ10秒から始めて1秒ずつ減らし、2秒で止めるのかを、実際に試した案とともに書きます。

このサイトには「1問ずつ即答する」タイプのゲームが3本あります。計算ラッシュ、カラーパニック、方向パニックです。題材はまったく違うのに、制限時間の設計だけは3本とも完全に同じ数値を使っています。

1問あたりの制限時間 = 10秒 − 回答回数 × 1秒(下限2秒)

この4つの数字(10秒・1秒・2秒・そして後述する20問)にたどり着くまでに、それなりの回り道をしました。その記録です。

最初の設計は「問題を難しくする」だった

当たり前の話ですが、最初は問題自体を難しくすることで難易度を上げようとしていました。計算ラッシュなら桁数を増やす、カラーパニックなら色数を増やす、という具合です。

これはうまくいきませんでした。理由は2つあります。

ひとつは、難しくできる幅に限界があること。暗算ゲームで3桁×3桁を出しても、それは難しいのではなく「解く気が失せる」だけです。暇つぶしのゲームで筆算を始める人はいません。

もうひとつは、難易度の上がり方が段階的になりすぎることです。2桁になった瞬間に急に難しくなり、そのあとはしばらく変化がない。なめらかに追い詰められる感じが出せませんでした。

時間で締めるほうが素直だった

そこで発想を変えて、問題の難しさはほどほどに固定して、制限時間だけを削っていくことにしました。

これがはまりました。同じ難易度の問題でも、10秒あれば余裕、5秒なら少し焦る、2秒ならほぼ反射。問題が変わっていないのに、体験がまったく変わります

しかも減らし方を線形にすれば、難易度の上がり方が完全に予測可能になります。プレイヤーから見ても「1問ごとに1秒ずつ短くなる」は直感的で、説明が要りません。

それぞれの数字の理由

初期値10秒 ─ 1問目で説明を読み終えるため

最初の1問だけは、ルールを理解しながら答えることになります。「文字の色を答える」「赤い矢印は逆」といったルールを、実際の画面を見て初めて腹落ちする人が大半です。

5秒スタートも試しましたが、1問目でいきなり失点する人が続出しました。それはゲームの難しさではなく、説明不足による事故です。

10秒あれば、初見でも画面を見渡してルールを確認し、落ち着いて1問目を答えられます。そして2問目以降はどんどん短くなるので、ゆるいのは最初だけです。

下限2秒 ─ 人間の限界の少し手前

下限をどこに置くかがいちばん悩みました。

1秒も試しました。結論から言うと、1秒は短すぎます。画面を見て、判断して、指を動かす。この一連の動作は、単純な反応でも0.25秒前後かかります(詳しくはリアクションタイムのページに書きました)。そこに「計算する」「色を判別する」という処理が乗ると、1秒ではまともに考える余地がありません。運ゲーになります。

2秒だと、急げば確実に間に合うが、少しでも迷うと落ちるという絶妙なところに落ち着きました。実力が結果に反映される下限、という感覚です。

1問1秒ずつ ─ 8問で最終形態にする

減り方の傾きは、「何問目で下限に達するか」を決めることと同じです。1秒ずつ減らすと、8回答で2秒に到達します。

0.5秒ずつ(16問で到達)も試しましたが、そこに至るまでが長すぎて中だるみしました。暇つぶしのゲームで、面白くなるまで16問待たせるのは長い。

1プレイ1〜2分で終わるゲームなので、開始10問前後で最終形態に入るのがちょうどよいバランスでした。あとはその状態でどこまで耐えられるかの勝負になります。

減るのは「正解数」ではなく「回答数」

これは地味ですが重要な判断です。制限時間は、正解・不正解にかかわらず、答えるたびに減ります。タイムアウトもカウントされます。

最初は正解数で減らしていました。すると、分からない問題は適当に押して飛ばすのが最適戦略になってしまいます。ライフは減りますが、制限時間は温存できるからです。

回答数で減らすようにしたことで、当てずっぽうにもコストがつきました。ライフを失ううえに、残りの問題を答える時間も削られます。「雑に進む」という選択肢を消すための設計です。

20問目の難度ジャンプ

制限時間は8問目で下限に達してしまうので、それ以降は時間による変化がありません。そこで20問正解した時点で、ゲームの中身そのものを変える仕掛けを入れています。

  • 計算ラッシュ → 2桁同士の計算になる
  • カラーパニック → 色が4色から6色に増える
  • 方向パニック → 4方向から8方向になり、逆転が常時オンになる

なぜ20かというと、2秒モードに十分慣れた頃だからです。8問目で2秒になり、そこから12問こなす間に、身体が2秒のリズムを覚えます。「これなら続けられそうだ」と思い始めたところで、前提を崩す。

ここで数字を出すのは、プレイヤーに「もう一段ある」と知らせるためでもあります。20問で終わりだと思っていたら、その先があった。この驚きを毎回作りたくて、3本とも同じ20という数字にしました。

難しさを足すときは、何かを引く

方向パニックを作るときに学んだことがあります。

8方向モードを追加したとき、当初は逆転の確率を50%のままにしていました。8方向・2秒・50%で反転。テストしてみると、これは難しいのではなくただ理不尽でした。何が起きたのか分からないうちに終わるのです。

そこで、8方向モードでは逆転を100%に固定しました。「必ず逆」ならルールは単純です。難しさは方向の精度に集中し、判断の負荷はむしろ減ります。

結果として、難易度は下げずに理不尽さだけを取り除けました。難しさを足すときは、同時に何かを引かないといけない。方向を倍にするなら、判断をひとつ減らす。これは他のゲームを調整するときにも、ずっと基準にしている考え方です。

数値を共通化してよかったこと

3本のゲームで同じ数値を使うと決めたことには、副次的な効果がありました。

遊ぶ側が学習を引き継げるのです。計算ラッシュで2秒モードのリズムを覚えた人は、カラーパニックでも同じリズムで戦えます。題材が違っても、時間の感覚は共通しているからです。

作る側としても、新しいゲームを足すときに悩まなくて済むようになりました。制限時間の設計は既に決まっているので、考えるべきは題材と難度ジャンプの内容だけです。実際、この数値はプロジェクト内の設計ガイドラインとして文書化してあり、新しいラッシュ系ゲームを追加するときはそこから始めます。

同じにしていい部分を同じにしておくと、違う部分に集中できます。

数字のまとめ

項目理由
ライフ3ミスに寛容だが緊張は残る
初期制限時間10秒1問目でルールを理解する余裕
下限2秒急げば間に合う人間の限界手前
1回答あたりの減少1秒8回答で下限到達、中だるみしない
減少のカウント対象正解+不正解+時間切れ当てずっぽうにコストを与える
難度ジャンプ20問正解2秒に慣れた頃に前提を崩す
終了条件ライフ0時間制限ではなく耐久戦

実際の挙動は計算ラッシュカラーパニック方向パニックで確かめてみてください。8問目あたりで空気が変わるのが分かると思います。

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