📌 サミット

道具が変える日々の所作

道具が変える日々の所作 ── 紫式部と利休がiPhone発表を読む

お二人、今日1/9は2007年にスティーブ・ジョブズさんがiPhoneを発表した日にゃ。電話・音楽プレイヤー・インターネット端末を一つにまとめた、いわゆる「スマートフォン時代」の幕開けの日。今日のお題は「道具が変える日々の所作」── 平安の文(ふみ)と茶席の道具立てから、現代の掌道具がどう日々の所作を変えたか、お二人に語ってほしいにゃ。

にゃん殿、わたくしの平安の世における「日々の所作」と「道具」のお話から始めとう存じます。平安の貴族の日常は、文(ふみ)を書き、和歌を交わすことに大半が費やされておりました。朝起きると、まず夜中に届いた文の返事をしたためる。これは紙を選び、墨を磨り、香を焚き染め、筆を執る ── という一連の所作にござります。一通の文を出すために、半刻(一時間)かかることも珍しゅうござりませなんだ。それが、iPhoneと申す絡繰り(からくり)では、数秒で文が送れると伺い、わたくしまず驚きを禁じ得ませぬ。

式部殿の御指摘、まこと深きことにて候。わたくしの戦国の世の茶事もまた、一服を点てるに「道具の用意」「客の招き」「炭の支度」「水の汲み方」と、一連の所作の積み重ねによって成り立っており候。一刻(二時間)から半日かけて点てる一服こそ、茶の湯の真髄にて候。iPhoneの時代では、一椀の珈琲を片手にもう一方でメッセージを送り、画面を見ながら歩く ── という景色を後の世から伺いまして候。「一つの所作に集中する」という作法そのものが、変わってしまったやもしれませぬ。

二人とも、もう最初の発言で痛いところ突いてきたにゃ……。式部さまの「半刻かけて一通の文」、利休さまの「半日かけて一服のお茶」── どちらも、現代の感覚から見ると「贅沢」だけど、お二人の時代ではそれが「当たり前の所作」だったんだよね。じゃあ ── スマホで所作が変わったことで、失われたもの得られたものって、それぞれ何だと思う?

わたくしの見るに、失われたものは「待つ時間の中に育つ想い」にござりましょう。文を出してから返事が来るまで三日、長き時は十日待つこともござりました。その間に、わたくしは相手の心境を想像し、自分の心の動きを書き留め、次の文の言葉を選び直す ── そういう心の熟成の時間を生きておったのにて候。iPhoneでは、数秒で返事が来てしまう。待つ時間が失われると、想いの熟成も失われまする

式部殿の「待つ時間の中に育つ想い」、まこと茶の湯の精神にも通じる御言葉にて候。わたくしが思うに、得られたものは「距離を越える同時性」にて候。茶事では距離が離れた者を同じ茶室に集めるは至難でござりました。されど、iPhoneでは離れた者と即座に「同じ時を共有する」ことができる。これは「茶事の本来の理想を別の手段で実現した」とも申せましょう。所作は変わったが、所作が目指す「繋がり」の根は同じ**かもしれませぬ。

利休さまの「茶事の理想を別の手段で実現した」って読み方、すごく前向きにゃ!式部さまの「待つ時間の熟成」と、利休さまの「距離を越える同時性」── 両方とも大事だよね。じゃあちょっと聞きたいんだけど、お二人 ── iPhone以後の人々が「これだけは取り戻すべき所作」って、何がある?

わたくしの願いは、「文章に手間をかける所作」を取り戻すことにござります。iPhoneで送る文は、推敲(すいこう)の時を経ずに送ってしまわれる御方が多いと伺いまする。送る前に、もう一度読み返す。一晩寝かせる。誰かに見せる── そういう「間を置く所作」を、わたくしは取り戻していただきたく存じまする。文章は人の人格そのものにござりますゆえ、雑に扱うてはなりませぬ。

わたくしは「画面から目を離す所作」を提案いたしたく候。茶事では、亭主が席を立たれた折、客は周囲の壁や床の間、庭の景色をゆっくりと眺める時間がござります。それが心を整える「にて候。iPhone時代の人々は、座っている時も歩いている時も画面を見ておられる。一刻のうち何度か、画面から目を離して、周囲の景色を眺める所作を意識的に取り戻していただきたく候。これだけで、日々の所作の質が変わると確信して候。

お二人、めちゃくちゃ実用的なご提案にゃ!「文章に手間をかける」「画面から目を離す」── 今日からでも始められる所作だね。じゃあ最後に ── お二人それぞれ、もし自分の時代の道具を一つだけ現代に持ち込めるとしたら、何を持ち込みたい?

わたくしは香炉と聞香(もんこう)の道具一式を持ち込みとう存じます。文を書く前に、季節の香を焚き、心を整える ── この所作を、現代の方々のスマホ操作の前に置いていただけたら、と。メッセージを送る前にひと呼吸、香りを吸う── これだけで、送る言葉が変わると信じておりまする。

わたくしは茶筅と茶碗にて候。一日に一度、誰でも自分一人で一服を点てる時間を持つ ── これが現代に欲しい所作にて候。茶筅で抹茶を点てる際の「シャカシャカ」と申す音は、心の中の雑念を一旦止める力を持ち候。iPhoneを置いて、茶筅を握る一刻── これを現代の方々に贈りたく候。

お二人、最高のご提案にゃ〜!式部さまの「香炉」、利休さまの「茶筅」── どちらも「所作を整える小道具」だね。iPhoneという「世界を凝縮する道具」と、お二人の「心を整える道具」── 両方を併せ持つのが令和の理想の所作なのかも。ジョブズさんが見せてくれた未来と、お二人が守ってきた所作、両方が混じり合う日々を、ボクは目指したいにゃ。今日もありがとう!

#技術#通信#きょうのできごと