1952年5月6日、向井千秋誕生(日本人女性初の宇宙飛行士)
天つ船の女医 ── 龍馬とお絹が向井千秋の挑戦を読む
今日5/6は、日本の女性で初めて宇宙に飛んだ向井千秋(むかいちあき)さんが生まれた日にゃ。1952年生まれ、群馬県の館林(たてばやし)出身。最初は心臓血管外科のお医者さんだったんだけど、1985年に宇宙飛行士の候補に選ばれて、1994年7月にスペースシャトル「コロンビア号」に乗り組んで、日本人女性として ── というかアジアの女性として ── 初めて宇宙に行った人なんだよ。1998年にも2度目の宇宙飛行を果たしてる。今日はね、龍馬さんとお絹ちゃんに、この「お医者さんでもあり、宇宙飛行士でもあった女のお人」をどう読み解くか、聞いてみたいにゃ。
にゃん殿、ありがたい一報ぜよ。「天の海に船出した女医」── これはわしの胸にずどんと響くぜよ。わしは勝海舟先生の咸臨丸(かんりんまる)に憧れた口じゃきね、太平洋を蒸気船で渡る話を聞いた折の血の沸きを今でも覚えちゅう。あれは「日本という家から海の向こうへ」じゃった。向井卿の場合は、もはや海を超えて「地そのものから天へ」ぜよ。船の規模が違いすぎて言葉を失うがじゃ。されど一つだけ、咸臨丸の頃から変わっておらぬものがある ── 新しき海に出る者は、戻れぬ覚悟で出るということぜよ。船底が割れたら海の藻屑じゃ。天の船が割れたら、命の戻る場所は星のかけらほども無いがじゃ。あの覚悟を、しかも女の身で背負われたか ── わしは深く頷くぜよ。
あらあら、お空に行った女のお人ですって? あたしね、これ最初に聞いた時、二度言わせてもらったわよ「お空? お空ってあのお空?」って。瓦版の挿絵の世界じゃないの、お月さまに兎がいるってあれと地続きの話みたいで。ねえねえ、しかもお医者さまだったんでしょ? あたしの長屋にお医者さまが来ると、みんな襟を正すのよ。それくらい有り難いお人なの。そのお医者さまが、しかも女の身で、お空にまで行っちゃうなんて ── これは歌舞伎の演目を超えてるわよ。あたしね、こういう話を聞くと胸がキュッてするのよ。「あたしらじゃ届かない場所に、ちゃんと女の人が行ってくれた」っていう、なんとも言えないあったかい気持ちでね。
お二人ともありがとう! ここで論点を3つに整理させてにゃ。①「天の海」── 龍馬さんが言ってくれた未知の海への船出としての意味、②「お医者さまであり飛行士でもあった」── 二つの専門を背負った二刀流の凄さ、③「女のお人がお空に届いた」── お絹ちゃんが言ってくれた象徴の重み。順番に深掘りしたいけど、まず②の二刀流について、龍馬さんはどう見るにゃ? 龍馬さんも「剣術の北辰一刀流」と「海援隊の航海術」みたいな二刀流の人だったよね。
にゃん殿、よう拾うてくれたぜよ。確かにわしも、土佐の道場で振っちょった刀と、長崎で覚えた船の操り、その二刀流のはしくれじゃ。されど向井卿の二刀流は、わしのとは桁が違うぜよ。心の臓を切る手は、誤れば人ひとりの命がそこで終わるがじゃ。天の船の梶を執る手は、誤れば己と仲間が星のかけらになるがじゃ。両方の手が、人の命を直に握っちゅうぜよ。普通は片方だけで一生かかる。それを両方背負うた覚悟 ── これは「志」と呼ぶにふさわしいがじゃ。わしらが幕末で振り回しちょった志は、まだまだ甘かったとさえ思うがじゃ。
龍馬さんの「両方の手が人の命を握ってる」って、ぐっと来るわぁ。あたしね、③のお話もしたいの。「女のお人がお空に届いた」── これってね、瓦版を見るあたしらの胸の奥にね、「あたしらでも、もしかしたら…」って小さなろうそくが灯る感じなのよ。あたしは長屋の町娘だから、お空に行くなんて夢のまた夢。でもね、そのお人が一人いるってだけで、夜の空を見上げる時の気分が変わるの。「あの星のあたりに、女のお人が一度行った」って思いながら見上げる空って、それまでと違う色に見えるのよ。あたしね、向井さんに直に会えなくても、夜空の方が変わったのが嬉しいのよ。
お絹ちゃんの「夜空の色が変わる」って表現、すごく沁みるにゃ。最後にお二人から、後に続く者 ── これからお空を志す若い人たちへの一言を頂きたいにゃ。1994年の向井さんの飛行から30年以上が経って、今は民間の宇宙旅行も現実になりつつある時代だにゃ。お絹ちゃんの長屋の子も、いつか天の御座を狙えるかもしれない時代にゃ。
わしから一言ぜよ。後に続く志士 ── いや、いまや志「飛士」と書くべきか ── に申し置く。新しき海に出る者は、戻れぬ覚悟で出よ。されど、戻れぬ覚悟と無謀は別もんぜよ。 向井卿は、心の臓を診る修練と宇宙船の操り、その両方を地に足つけて積まれた上で、天に登られた。志だけ高うても、地の修練が伴わなんだら船は割れるがじゃ。これは咸臨丸の頃から変わらぬ理ぜよ。志と修練、両方持って参られよ。
あたしからも一言。お空を目指す若い娘さんたちにね。夢って、自分一人で抱え込むと重いの。でもね、誰かが先に行ってくれた道って、ぐっと軽くなるのよ。 向井さんはあたしらの代わりに、すごく重たい初めの一歩を踏んでくれた人なの。だからね、二歩目はあたしらの番なのよ。長屋の隅っこで瓦版を読んでる女の子も、お空を諦めなくていい時代になったってこと、忘れないでちょうだいね。
龍馬さんの「志と修練、両方」、お絹ちゃんの「二歩目はあたしらの番」── 二つともね、向井千秋さんの生き方そのものが教えてくれることだにゃ。地の上の修練を積み切ってから、天に登る。一歩目を踏んでくれた人がいるから、二歩目を踏める ── 5/6に生まれたお人の道は、これから先もずっと若い人たちの背中を押し続けるんだろうにゃ。お二人、ありがとうにゃ!